サシチョウバエ熱 phlebotomus fever

サシチョウバエ熱 phlebotomus fever


【概念】

 サシチョウバエ phlebotomus pappatasii(砂バエ sandfly)によって媒介されるウイルス性感染症。サシチョウバエ熱 Phlebotomus fever、砂バエ熱 sandfly fever、パパタチ熱 pappataci fever、あるいは3日ほどで症状が軽快するので3日熱 three day feverとも呼ばれる。地中海沿岸で広範にみられ、アジア、アフリカでも認められる。

【病原体】

 ブニヤウイルス科フレボウイルス属のサシチョウバエ熱ウイルス sandfly fever virus。
 ヨーロッパの地中海沿岸では以下の4血清型が報告されている。
・トスカーナウイルス Toscana virus (TOSV)
・ナポリ型サシチョウバエ熱ウイルス Sanfly fever Naples virus (SFNV)
・シチリア型サシチョウバエ熱ウイルスSanfly fever Sicillia virus (SFSV)
・キプロス型サシチョウバエ熱ウイルスSanfly fever Cyprus virus (SFCV)
 サシチョウバエは小型の吸血性双翅目で、4月〜10月に発生し、夜間に吸血を行なう。ウイルスはサシチョウバエの中で経卵感染により継代される。

【臨床症状】

・潜伏期間:5〜8日
・突然39℃以上の高熱で発症し、頭痛、眼痛(眼窩後部痛)、結膜充血、咽頭腫脹、全身の関節・筋肉痛が出現する。
 悪心・嘔吐、下痢、粘血便などの消化器症状もみられる。
・トスカーナウイルスによるものは髄膜炎や髄膜脳炎を合併することがある。
・3病日頃から解熱し始め、回復に向かう。
・予後は一般に良好。常在地域の住民は免疫を持つ。

【治療】

 対症療法のみ。


【註記】
・2011年10月に地中海のマルタ島からの帰国者によるわが国初の症例が出現した。


【参考】
・厚生労働省検疫所FORTHホームページ


【作成】2017-01-02