マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎 Mycoplasma pneumonia


【概念】
 マイコプラズマの飛沫感染による非定型肺炎。発疹を伴うことが多い。

【原因菌】
 マイコプラズマ Mycoplasma peumoniae
・無細胞培地で自己増殖する最小の微生物
・細胞壁がない:β−ラクタム系抗生剤が無効(非定型肺炎)
・健常人に発症する(市中肺炎)
・5〜25歳に好発(5歳未満の乳幼児はまれ)

【臨床症状】
 自覚症状が強く、X線所見の割に胸部理学所見に乏しい。
・肺炎:高熱、頑固な乾性咳嗽、ときに胸水
 激しい咳のわりに聴診状ラ音が聴取されない。
・幼児は咽頭炎、小児は気管支炎、青年・成人は肺炎をきたしやすい。
・特有の発疹を伴うことが多い。
・鼓膜炎、中耳炎、関節炎をきたすこともある。

【臨床検査】
・血液検査:CRP上昇、白血球正常
・胸部X線:多彩な所見で、特有のものはない。
 すりガラス状陰影、間質性陰影、気管支肺炎像、胸水、ときに移動性浸潤影。
・遺伝子増幅法(LAMP法):発症初期(2〜16日目)に検出可能。
・病原体分離:PPLO寒天培地(2〜3週間)。
 自己増殖能がある(細胞外で発育可能)ため、無細胞培地で増殖できる。

<血清学的検査>
 検出率が高い

1)血清マイコプラズマ抗体価
 ① 補体結合反応(CF):IgM、IgGクラス抗原を測定
  単独で64倍、またはペア血清で4倍以上の上昇で陽性。
 ② 受動赤血球凝集反応(PA)
  単独で320倍、またはペア血清で4倍以上の上昇で陽性。
 ③ イムノクロマトグラフィー法:IgMを測定
  急性期より上昇し迅速診断可能。特異性に劣る。
2)寒冷凝集素価:非特異的な補助診断法
  約50%で発症1〜2週後に上昇。
3)マイコプラズマDNA検出
  DNAプローブ法、PCR法、LAMP法
4)咽頭拭い液からの抗原検出
  PCRとの一致は85%以上。

【合併症】
1)ギラン・バレー症候群
2)Stevens-Johnson 症候群(皮膚の多発性紅斑+口腔内アフタ)
3)中枢神経合併症:脳炎、無菌性髄膜炎
4)胸膜炎、皮膚紅斑、発疹、溶血性貧血、肝機能異常

【治療】
・マクロライド系、テトラサイクリン系が第一選択。
 アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン
 テトラサイクリン系は8歳未満の小児に歯牙変色、妊婦で催奇性あり。
・マクロライド系が無効または使用不可なら、レスプラトリーキノロン系。
・重症例ではステロイドの全身投与。

【予後】
・一般に良好。合併症を伴うと重篤化することがある。
・近年、小児を中心にマクロライド耐性マイコプラズマが増加。