福山型先天性筋ジストロフィー Fukuyama-type congenital muscular dystrophy (FCMD)

福山型先天性筋ジストロフィー Fukuyama-type congenital muscular dystrophy (FCMD)


【概念】
 日本人に特有の常染色体劣性遺伝の筋疾患で、筋ジストロフィーに加えて脳奇形と眼病変の合併を特徴とする。
 9番染色体長腕9q31にあるフクチン fukutin遺伝子の変異により発症する。大半の患者では3’非翻訳領域にレトロトランスポゾン配列が挿入されているため、エクソントラップというスプライシング異常が惹起される。
 この遺伝子変異は縄文時代の日本人祖先の1人に生じたとされ、約100世代を経た現在では、日本人の90人に1人がヘテロ接合の保因者となっている(創始者効果)。

【疫学】
 本邦の小児筋ジストロフィーのなかではDMDに次いで2番めに多い。
 有病率は10万人当たり3人。

【病理】
 筋線維の壊死・再生像に加え、間質の結合組織が著しく増生し、早期から激しいジストロフィー変化が生じる。筋線維は円形・小径で筋分化が遅延している。
 脳の形成段階で神経細胞の移動が障害され、多小脳回 polymicrogyriaを基本とする高度の脳奇形(敷石滑脳症)を呈する。
 フクチンは筋鞘膜と基底膜をつなぐ糖蛋白α‐ジストログリカンのo-マンノース型糖鎖修飾を司っており、この糖鎖修飾が欠損すると細胞膜‐基底膜の結合が破綻するため、重度の筋ジストロフィーを発症する(α‐ジストログリカノパチー)。

【臨床症状】
 初発症状は頚座の遅れや運動発達遅滞。
 重症例では生下時より呼吸不全、哺乳力低下がみられ、floppy infantを呈する。
 顔面筋罹患により表情に乏しく、開口し、高口蓋を認める。
 早期より手指・股・足関節に拘縮が始まり、やがて全身の関節拘縮に至る。
 全例に中〜高度の知的発達遅滞を認める(IQ50未満)。
 てんかん発作は約半分の患者に合併する。
 近視、白内障、視神経萎縮、網膜剥離などの眼病変は約70%にみられる。
 10歳以降になると心筋症による心不全、肺炎、呼吸不全を合併するようになり、平均寿命は15歳程度。

【診断】
 フクチン遺伝子検査により確定診断となる。

【治療】
 有効な治療法はなく、リハビリテーションが主体となる。


【註記】


【参考】


【作成】2017-10-17