ジカ熱 Zika fever

ジカ熱 Zika fever


【概念】

 ジカ熱はジカウィルスによって発症する、発疹、発熱、結膜炎などを呈する、一般に予後良好な感染性疾患。
 ジカウィルス Zika virus (ZIKV)はフラビウイルス科フラビウイルス属に分類され、1947年にウガンダのジカ森林群においてアカゲザルの血清より分離された。サルと蚊による森林型感染環が自然界で維持されていると考えられてきたが、2007年よりアジア型の遺伝子株がヒトと蚊による都市型感染環を形成してアウトブレイクを起こすようになった。
 2007年にミクロネシア連邦のヤップ島における集団発生を皮切りに、2013年には仏領ポリネシアにて3万人を超える規模の大流行が発生。2015年春よりブラジル北東部において大規模なアウトブレイクが発生し、2016年2月にはWHOより「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態 (PHEIC)」に認定された。
 2016年8月の時点で中南米全体で疑い例約46万、確定例約10万とされているが、2016年2月をピークに発生患者は減少傾向となっている。

【感染経路】

・ZIKVを唾液腺に保有する蚊の刺咬が主。
 ZIKVを媒介するのはヤブカ属 Aedesのネッタイシマカ A. aegyptiとヒトスジシマカ A. albopictusが代表で、後者は東北以南の日本に広く生息している。
・患者の血液・体液による接触感染もおこる。
・感染者との性交渉によっても感染しうる。
・経胎盤および産道感染による垂直感染もおこる。

【臨床症状】

・潜伏期間:2〜12日(平均6日)で、80%程度は不顕性感染。
・症状:発疹(紅斑、丘疹)が最も多く、発熱、関節痛・関節炎、結膜炎など。
 発熱は38.5度以下のことが多く、結膜炎は非滲出性、充血性。
 通常、2〜7日程度で自然回復し、重症化や死亡例はまれ。
・検査所見:特有のものはない。

【合併症】

・ギラン・バレー症候群の発生がみられる。
・血小板減少性紫斑病、髄膜脳脊髄炎、ぶどう膜炎などもみられることがある。

【先天性ジカウィルス感染症】

・小頭症の発生頻度が有意に上昇する。妊娠初期(7〜13週)の感染でおこりやすい。
・小頭症に眼障害(網脈絡膜萎縮、視神経形成異常)などが合併することもある。また、頭蓋内石灰化がみられることもある。

【診断】

・RT-PCRまたはウィルス分離
・ペア血清による血清抗体診断


【註記】


【参考】
・加藤康幸「ジカウィルス感染症の現状と動向」:日本内科学会雑誌 105巻11号 2016
・岡部信彦「近年問題となった新興感染症と現状」:日本内科学会雑誌 105巻11号 2016


【作成】2016-12-12