ウエストナイル熱 West Nile fever

ウエストナイル熱
West Nile fever


【概念】

 ウエストナイルウィルスによる熱性疾患(ウエストナイル熱)および髄膜脳炎(ウエストナイル脳炎)。
 従来アフリカ、ヨーロッパ、西アジアにおいて小流行が見られるのみだったが、1999年に米国ニューヨーク市で発生が報告されて以後、世界各地で比較的大きな流行がおこるようになった。

【病原体】

 フラビウイルス科フラビウイルスに属するウエストナイルウィルス West Nile virus。
 自然界においては蚊-鳥-蚊の循環環が維持されている。
 ヒトは終末宿主であり、感染者は感染源とはならないが、輸血、臓器移植や経母乳、経胎盤的に伝播しうる。

【疫学】

・季節性:温帯地域においては夏から初秋
・好発年齢:脳炎は高齢者に多い
・感染者の多くは不顕性で、約20%が発症する

【臨床症状】

1)ウエストナイル熱 West Nile fever
・潜伏期間2〜14日(多くは2〜6日)
・発熱で発症し、頭痛、背部痛、筋肉痛、吐気、リンパ節腫脹などがみられる。
・胸部、背部、上肢に発疹が出現する。
・急性症状は3〜6日で消失し、通常後遺症もなく回復する。

2)ウエストナイル脳炎 West Nile encephalitis
・感染者の約150人に1人が重篤な脳炎、髄膜炎を発症する。
・頭痛、高熱、意識障害、錐体外路症状、痙攣などをおこす。
 約半数に筋力低下が認められる。
・消化器症状や視神経炎を伴うこともある。
・高齢者に多く、致死率は約10%。

3)脊髄・末梢神経症状
 髄膜脳炎患者において、知覚障害を示さず、両側非対称の筋力低下、腱反射の消失を伴う弛緩性麻痺がみられることもある。脊髄前角細胞の障害が原因と考えられる。中には中枢神経症状を示さない例も報告されている。

【検査】

・白血球数は正常〜軽度増加、リンパ球数減少
・脳炎患者では髄液中のリンパ球数増加、蛋白増加、糖正常

【診断】

・血液や髄液からのウィルス分離
・RT-PCRによるウィルス遺伝子の検出
・特異的IgM抗体検出またはペア血清での特異的IgG抗体上昇(ただし日本脳炎ウィルスと交叉反応がある)。

【治療・予防】

・対症療法のみ
・ワクチンなし


【註記】


【参考】


【作成】2016-12-23