水痘(みずぼうそう)
chickenpox, varicella
【概念】
皮膚や粘膜に丘疹、水疱、痂皮が連続してみられる感染性疾患で、水痘帯状疱疹ウィルスによる。
【病原菌】
ヘルペスウィルス科の水痘-帯状疱疹ウィルスvaricella-zoster virus (VZV)の初感染。
ウィルスは上気道に感染後、局所のリンパ節で増殖し、血中に侵入する(第1次ウィルス血症)。肝臓、脾臓などの網内系臓器に到達し、そこでさらに増殖してリンパ球付随性の第2次ウィルス血症をおこし、全身の皮膚に水疱形成をみる。
水痘治癒とともにウィルスは水疱部位の知覚神経末端から求心性に、あるいはウィルス血症の際に血行性に神経節に侵入して潜伏する。その後ウィルス特異的細胞性免疫が低下する状況下で知覚神経節内のウィルスが再活性化され、帯状疱疹をおこす。
【疫学】
・感染症予防法4類、学校保険法2種
・季節:通年性だが、冬〜春に流行
・好発年齢:幼児・学童(5〜9歳)
・潜伏期:10〜21日(2週間前後が多い)
【感染経路】
・空気感染により気道に侵入する(接触感染も) 。
・伝染力は強く、不顕性感染は少ない。
・発疹出現1〜2日前から水疱痂皮化まで伝染力がある。
【症候】
発熱、倦怠感、発疹で発症。
発疹は顔から始まり躯幹、四肢へと広がる。皮膚の炎症部位に密集する傾向がある。有髪部や口腔粘膜にも出現し、掻痒感が強い。ときに眼球結膜や角膜に出現して潰瘍をつくることもある。
発疹は小紅斑→丘疹→水疱→膿疱→黒色痂皮へと変化し、痂皮は数日後に脱落する。
最盛期には丘疹から各時期の水疱、痂皮が混在するのが特徴。
通常、細菌感染がなければ瘢痕は残さない。
健康小児では一般に軽症で予後良好だが、免疫機能低下例では遷延・重症化することがある。
【合併症】
・重症水痘:免疫低下状態の患児では出血性、進行性、全身性播種性水痘になり、致死的になることがある。
・成人水痘:成人のVZV初感染は重症化の傾向があり、肺炎の合併が多い。
・先天性水痘症候群:妊娠初期のVZV初感染により、胎児に多彩な所見(瘢痕性皮膚病変、四肢低形成、白内障、脈絡網膜炎、小眼球症などの眼異常、小頭症、精神発達遅滞などの中枢神経系異常)を呈する。妊娠8〜20週に危険性が高い。
・新生児水痘:分娩前4日〜分娩後2日間の母体の水痘発症により、児が生後5〜10日頃水痘を発症すると重症化し、死亡率も高い(約30%)。
・皮疹部二次性細菌感染症:ブドウ球菌やA群溶血性連鎖球菌の二次感染により、化膿性リンパ節炎、蜂窩織炎、リッター病、劇症型A群溶連菌感染症や敗血症などの全身性疾患に進展することがある。
・脳炎:発症頻度は水痘1,000例に1例以下といわれるが、髄膜脳炎や小脳性運動失調をきたすことがある。水痘発症後3〜8日頃に多く、死亡例や重症後遺症を残す例もある。
・その他:水痘肝炎はまれではないが、多くは無症状。まれにライ症候群、血小板減少性紫斑病、急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症性腎炎、関節炎、心筋炎、心嚢炎、膵炎、精巣炎、電撃性紫斑病などをおこすことがある。
【診断】
・水疱内容液からのウィルス分離、PCRによるウィルスDNA検出。
・水疱内容液からVZV単クローン抗体とウィルス抗原を証明。
・ペア血清で抗体上昇、またはIgM特異抗体の証明。
【治療】
・経口アシクロビルaciclovir (ACV)治療は発疹出現後3日以内に開始する。
・皮膚掻痒には抗ヒスタミン剤内服または外用、石炭酸亜鉛華リニメント外用。
・重症例ではアシクロビルaciclovir (ACV)静注やV-Zウィルス高抗体価免疫グロブリン静注。
・発熱にはアスピリンは使用しない(ライ症侯群との関わり疑い)。
【予防・管理】
・出席停止期間はすべての発疹が痂皮化するまで。
・任意接種として水痘弱毒生ワクチンがあり、1歳以上が対象となる。発症予防効果は85%であるが、重症化は100%予防可能。2014年10月より定期接種化。
・家族内の二次感染発症予防には72時間以内のワクチン接種。
【註記】
【参考】
【作成】2016-12-15