未破裂脳動脈瘤 unruptured brain aneurysm

未破裂脳動脈瘤 unruptured brain aneurysm


【概念】
 脳動脈瘤のうち、破れていない状況で偶然または何らかのきっかけで発見されたもの。

【疫学・病型】
 成人の約3%に発見される。
 高齢者>若年者、女性(約2倍)>男性
 形態的には嚢状動脈瘤、紡錘状動脈瘤および解離性動脈瘤があり、未破裂動脈瘤のほとんどは脳血管の分岐部に発生する嚢状動脈瘤である。
 サイズ的には小型(<5mm)、中型(5〜9mm)、大型(10〜24mm)、巨大(>25mm)に分類され、発見される動脈瘤の約半数は小型である。
 部位別頻度は、内頚動脈47%、中大脳動脈35%、前大脳動脈18%、後方循環5%。

【病因】
 機序としては、何らかの原因で血管壁の弾性板、中膜が傷害されて動脈瘤が発生する。
 基礎疾患としては喫煙と高血圧の合併が重要であり、遺伝要因にさまざまな生活習慣要因が加わって発生すると考えられている。

【臨床症状】
 大半は無症候である。
 まれに動眼神経麻痺による眼瞼下垂や複視、動脈瘤からの血栓による脳梗塞、動脈瘤の圧迫による頭痛などの症候を呈することもある。

【検査所見】
 MRI・MRA:嚢状動脈瘤は脳血管の分岐部にできた嚢状の膨らみとして検出される。
 形状が不整の場合は、突出した部分をブレブ blebという。まれに血栓化や石灰化がみられる。
 脳血管造影:血管内治療や開頭手術のために治療プランを決定するために行われる。

【予後】
 年間破裂の危険性は全体で0.95%。
 大型瘤は小型瘤より9倍破裂しやすい。
 小型瘤でも前交通動脈や内頚動脈‐後交通動脈分岐部に発生した動脈瘤は破裂の危険性が高い。
 破裂リスクは発見された初年度が最も高く、経過を追ううちに徐々に低下していく。

【治療】
1)経過観察
 破裂が比較的早期に多いため、発見後半年以内に再検査し、その後は破裂危険性に応じて、年1%以上の破裂リスクのあるものは半年に一度、それ以下のものは年1回フォローする。
 瘤に形状や大きさの変化がみられた場合は動脈瘤が不安定な状況であるため、積極的治療を含めた検討が必要になる。
2)開頭手術
 開頭手術により脳動脈瘤の頚部をクリップで挟んで血流を遮断する。
 脳表に比較的近い中大脳動脈瘤や頚部の広い動脈瘤に適している。
 クリッピング後の再発や破裂は比較的少ない。
3)血管内手術
 カテーテルにより動脈瘤の血管内腔から動脈瘤頚部に到達し、動脈瘤をコイルで塞栓する。
 コイルが圧縮(コンパクション)されて動脈瘤が再発したり、破裂したりする場合があるため、長期にわたる経過観察が必要となる。
 開頭手術か血管内手術かの選択に関しては、現在明らかな結論は出されていないが、年々血管内手術の割合が増加傾向にある。


【参考】
・森田明夫「未破裂脳動脈瘤」:日本医師会雑誌 第146巻・特別号(1) 2017