野兎病 tularemia

野兎病 tularemia


【概念】
 野兎病菌による感染症で、感染部位の潰瘍性病変と所属部位のリンパ節炎が主症状。
 人獣共通感染症であり、感染症法の四類感染症。

【病原菌】
 野兎病菌 Francisella tularensisはG陰性の多形性を示す小桿菌で、通性細胞内寄生菌である。
 本来野生動物に感染し、国内では野ウサギが主要な感染源となる。
 保菌動物との直接接触や肉との接触、吸血性節足動物を介しての感染が多く、ヒトからヒトへの直接感染は通常みられない。
 本菌は感染力が強いため、バイオテロに使用される危険性もある。

【疫学】
 北米や北ヨーロッパに広くみられ、散発的ときに流行性に発生する。
 日本では東北、関東、北海道にみられ、狩猟期の冬とマダニが活動する晩春に多い。

【臨床症状】
 潰瘍リンパ節型、リンパ節型、眼リンパ節型、口咽頭型、胃腸型、肺炎型などに分類される。
 潜伏期間は2〜21日。悪寒、発熱、頭痛などで発症する。
 リンパ節型はリンパ節の有痛性腫脹を認める。
 潰瘍リンパ節型ではリンパ節腫脹に加えて皮膚の潰瘍性病変を伴う。
 眼リンパ節型では流涙、有痛性眼部腫脹、結膜充血などを認める。
 口咽頭型、胃腸型は経口感染で起こり、咽頭炎や下痢、嘔吐などがみられる。
 肺炎型は肺炎や胸膜炎がみられ、縦隔リンパ節腫大を認めることもある。
 菌は血中に侵入しやすく、菌血症を合併したものをチフス型と呼ぶこともある。菌は血流によって各臓器に散布され、髄膜炎、骨髄炎、肝炎などの合併や敗血症に至ることもある。

【検査・診断】
 白血球増加やCRP上昇などの炎症反応がみられるが、特徴的な所見はない。
 診断はリンパ節などの検体より菌の分離・同定による。

【治療】
 適切な治療が施されないと症状は継続し、肺炎や敗血症を合併すると予後不良。
 野兎病菌はβラクタム系抗菌薬に耐性を示し、アミノグリコシド系、テトラサイクリン、ニューキノロン系抗菌薬が有効。
 腫脹したリンパ節の穿刺排膿も症状の改善には有効だが、瘻孔形成の危険性もある。


【註記】


【参考】


【作成】2017-07-03