高安動脈炎 Takayasu arteritis (TAK)

高安動脈炎 Takayasu arteritis (TAK)


【概念】
 大型血管炎に属し、主に大動脈とその第1分枝に狭窄、閉塞または拡張をきたし、血流障害による様々な症状をきたす自己免疫性疾患。
 大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などの呼称は2014年に「高安動脈炎」に統一された。

【疫学】
 厚生労働省指定の特定疾患。
 男女比約1:9で女性に多く、女性の初発年齢は20歳前後にピークがある。
 病因は未だ不明だが、HLAアレルではHLA-B52、HLA-B67が関連する。

【臨床症状】
 原因不明の発熱、頚部痛、全身倦怠感など、上気道炎に類似した症状で初発することが多い。
 動脈狭窄では大動脈弓部分分枝病変による脳虚血症状や視力障害、上肢虚血による上肢のだるさ、上肢挙上や上方を見る動作に伴うめまい・失神など。
 病型はⅠ〜Ⅴ型に分類されるが、ほどんどの症例では上行大動脈に病変が存在し、腹部大動脈に病変が限局するⅣ型は約20%と少ない。
 まれに冠動脈や肺動脈に病変を合併することがある。

【検査所見】
・血液検査:CRP、血清アミロイドA、血沈などの炎症マーカーの亢進、白血球増多、血小板増多、貧血、γ‐グロブリン上昇など。
・画像検査:MRAが有用。

【診断】
① 米国リウマチ学会分類基準(1990)
② 合同研究班診断基準(2006〜2007)

【治療】
 免疫抑制療法が中心。
 ステロイドは最も確実な治療効果を示す標準治療薬である。
 初期投与量はプレドニゾロン(PSL)20〜30mg/日程度(中等量)。
 再燃しやすいため、PSL5〜10mg/日を維持量とする。
 難治性症例ではステロイドパルス療法や免疫抑制剤投与も考慮する。
 血管の狭窄や閉塞、大動脈拡張による大動脈弁閉鎖不全が生じた例では外科的治療を選択する。


【参考】
・中岡良和「高安動脈炎」:日本医師会雑誌 第146巻・特別号(1) 2017