洞機能不全症候群 sick sinus syndrome (SSS)

洞機能不全症候群 sick sinus syndrome (SSS)


【概念】
 洞結節の機能障害や洞結節から心房への興奮伝導障害による徐脈性不整脈の総称。
 年齢とともに指数関数的に増加し、60〜70代で最も多く、性差はない。
 若年者での発症には遺伝的要因(SCN5A、HCN4、ANK2)の関与が大きい。

【分類】
・特発性または二次性
・機能的(一過性)または器質的(持続性)

〈Runbensteinの分類〉
・Ⅰ群 洞性徐脈:
 原因不明の50拍/分未満の持続性洞徐脈。
 夜間睡眠中のみの徐脈や、スポーツ選手等が安静時は徐脈であっても労作で速やかに心拍数の上昇を認める場合は病的意義はない。
・Ⅱ群 洞停止または洞房ブロック:
 洞停止は洞結節自動能の停止状態で、突然P波が欠損し、房室接合部補充調律を伴うこともある。
 洞房ブロックは、洞結節の刺激は停止してないが、洞結節から心房への興奮伝導が傷害されている状態。
 PP間隔が基本調律のPP間隔の整数倍に延長する。
 夜間に認めることが多いため、Holter心電図が有用である。
・Ⅲ群 徐脈頻脈症候群:
 頻脈性の上室性不整脈の停止時に出現する洞興奮の回復遅延に伴う著明な洞停止。
 頻脈の原因としては心房細動の合併が最も多い

【臨床症状】
・脳虚血症状:一過性脳虚血によるめまい、失神(Adams-Stokes発作)、眼前暗黒感、痙攣など。
  洞房ブロックや洞停止の場合に多い。
・心不全症状:低拍出量による全身倦怠感、息切れなど。
  持続性徐脈が原因になることが多い
・徐脈頻脈症候群では、頻拍による動悸が停止した後に脳虚血症状を訴えるのが特徴的。
・合併症として塞栓症がある。

【電気生理学的検査】
・洞結節回復時間 sinus node recovery time (SNRT)による洞機能評価
 心房頻回刺激 overdrive suppression testにて、心房ペーシング後の洞調律回復までの時間を表し、正常値は1,500msec以内。
・補正洞結節回復時間 corrected sinus node recovery time
 洞結節回復時間から心房頻回刺激前の心房周期長 sinus cycle length (SCL)を減じた時間。正常値は550msec以内。
・洞結節回復時間/基本洞周期 SNRT/SCL(%)
 正常値は150%以内。

【治療】
 薬物療法としては交感神経作動薬や副交感神経遮断薬が用いられる。
 急性期には、イソプロテレノールの持続点滴静注や硫酸アトロピンの静注をおこなう。
 慢性期には、アトロピン、硫酸オルシプレナリンの経口投与を行う。抗徐脈作用のあるシロスタゾールを使用することもある。
 ただし、第1選択としてはペースメーカー植え込み術が選ばれる。
 徐脈頻脈症候群では、塞栓症予防のために抗凝固療法を行う。


【註記】


【参考】


【作成】2017-06-02