脊髄小脳変性症の診断基準(厚生労働省)
【主要項目】
脊髄小脳変性症は、運動失調を主要症候とする神経変性疾患の総称であり、臨床、病理あるいは遺伝子的に異なるいくつかの病型が含まれる。臨床的には以下の特徴を有する。
① 小脳性ないしは後索性の運動失調又は痙性対麻痺を主要症候とする。
② 徐々に発病し、経過は緩徐進行性である。
③ 病型によっては遺伝性を示す。その場合、常染色体優性遺伝性であることが多いが、常染色体あるいはX染色体劣性遺伝性の場合もある。
④ その他の症候として、錐体路症候、パーキンソニズム(振戦、筋強剛、無動)、自律神経症候(排尿困難、発汗障害、起立性低血圧)、末梢神経症候(しびれ感、表在感覚低下、深部覚低下)、高次脳機能障害(幻覚[非薬剤性]、失語、失認、失行[肢節運動失行以外])などを示すものがある。
⑤ 頭部MRIやX線CTにて、小脳や脳幹の萎縮を認めることが多いが、病型や時期によっては大脳基底核病変や大脳皮質の萎縮などを認めることもある。
⑥ 以下の原因によるニ次性小脳失調症を鑑別する:脳血管障害、腫瘍、アルコール中毒、ビタミンB1・B12・葉酸欠乏、薬剤性(フェニトインなど)、炎症[神経梅毒、多発性硬化症、傍腫瘍性小脳炎、免疫介在性小脳炎(橋本脳症、シェーグレン症候群、グルテン失調症、抗GAD抗体小脳炎)]、甲状腺機能低下症、低セルロプラスミン血症、脳腱黄色腫症、ミトコンドリア病、二次性痙性対麻痺(脊柱疾患に伴うミエロパチー、脊髄の占拠性病変に伴うミエロパチー、多発性硬化症、視神経脊髄炎、脊髄炎、HTLV-I関連ミエロパチー、アルコール性ミエロパチー、副腎ミエロニューロパチーなど。
【診断のカテゴリー】
・Definite:
脊髄小脳変性症・痙性対麻痺に合致する症候と経過があり、遺伝子診断か神経病理学的診断がなされている場合。
・Probable:
(1)脊髄小脳変性症に合致する症候があり、診断基準の主要項目①②⑤及び⑥を満たす場合、若しくは痙性対麻痺に合致する症候があり、主要項目①②及び⑥を満たす場合。
又は
(2)当該患者本人に脊髄小脳変性症・痙性対麻痺に合致する症状があり、かつその家系内の他の発症者と同一とみなされる場合(遺伝子診断がなされていない場合も含む。)。
・Possible:
脊髄小脳変性症・痙性対麻痺に合致する症候があり、診断基準の主要項目①②⑤を満たす、又は痙性対麻痺に合致する症候があり、主要項目①②を満たすが、⑥が除外できない場合。
(運動失調症の医療基盤に関する調査研究班 2017更新)
【註記】
【参考】
・難病情報センターHP
【作成】2017-10-04