脊髄小脳変性症 spinocerebellar degeneration (SCD)

脊髄小脳変性症 spinocerebellar degeneration (SCD)


【概念】
 小脳を中心として脊髄、脳幹、大脳など広範な領域が侵されうる変性疾患。症状としては小脳性運動失調症が主で、障害される領域に応じてパーキンソニズム、不随意運動、認知機能障害、錐体路徴候、感覚障害などさまざまな症状も加わることがある。
 SCDという名称は、1954年にGreenfieldが運動失調症を呈する変性疾患を障害部位により脊髄性、小脳性、脊髄小脳性と分類したことに由来する。
 通常SCDには多系統萎縮症(MSA)も含まれるが、わが国の指定難病制度ではMSAが別疾患として扱われている。
 国際的にはSCDよりも cerebellar ataxiaやspinocerebellar ataxia(SCA)という名称がより広く用いられる。ただし、SCAという名称は常染色体優性遺伝の脊髄小脳変性症(AD-SCD)のみを指す場合もある。

【分類と頻度】
 SCDはまず遺伝性の有無により分類される。
・孤発性 sporadic(非家族性 non-familial)
・遺伝性 hereditary(家族性 familial)
  ・常染色体優性遺伝 autosomal dominant (AD)
  ・常染色体劣性遺伝 autosomal recessive (AR)
  ・X染色体連鎖性

 わが国のSCDは、約2/3が孤発性で1/3が遺伝性であり、遺伝性の大部分はAD-SCDである。
 孤発性の大部分(約65%)はMSAの中で運動失調症を主に呈するMSA-Cであり、これは従来、オリーブ橋小脳萎縮症 olivo-ponto-cerebellar atrophy : OPCAと呼ばれた病型である。残り(約35%)はほぼ純粋に小脳症状のみを呈する皮質性小脳萎縮症 cortical cerebellar atrophy : CCAである。

 AD-SCDのうち、多系統障害型ではマシャド・ジョセフ病 Machado-Joseph disease : MJD /脊髄小脳失調症3型 spincerebellar ataxia type 3 : SCA3が最も多く、純粋小脳失調型では歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 dentate-rubral and pallido-Luysian atrophy : DRPLA、SCA6、SCA31で大部分を占める。
 AD-SCDの病名は、MJDやDRPLAなどすでに名称が確立しているもの以外は、遺伝子座の発見された順番にSCAの後ろに番号を付けて表示される。

 AR-SCDでは、欧米ではフリードライヒ失調症 Friedreich ataxia : FRDAが最も多いが、わが国には存在しないため、AR-SCDは非常にまれである。
 X連鎖性SCDはさらにまれであるが、脆弱X症候群の原因遺伝子FMR1のCCG異常伸長が少し短いときに生じる脆弱X振戦/失調症候群 fragile X tremor/ataxia syndrome : FXTASが有名である。

【診断基準】
厚生労働省:脊髄小脳変性症の診断基準


【註記】


【参考】
・水澤英洋「脊髄小脳変性症とその分類」:CLINICAL NEUROSCIENCE vol.35 no.9 (2017)


【作成】2017-10-03