心室期外収縮 premature ventricular contraction (PVC)
【概念】
期外収縮とは、本来の周期(多くは洞調律周期)よりも早期に過剰な脱分極興奮が生じることであり、心室(His束分岐部より下部の刺激伝導系や固有心室筋)を起源とするものを心室性期外収縮 premature ventricular contraction (PVC)という。心室性期外収縮が3回(または6回)以上連発する場合は心室頻拍と呼ばれる。
正常人の約半分に何らかの形の心室期外収縮が認められる。
心室筋にはリエントリー基盤が存在しないため、心室期外収縮の予後は良好である。
【分類】
・形態:単形性/多形性
・頻度:単発性/多発性
・代償性心室期外収縮:次の洞調律が抑制またはブロックされ、心室期外収縮をはさんだ心室周期が約2倍に延長するもの。
・間入性心室期外収縮:心室期外収縮が次の心室周期に影響しないもの。
・2段脈:洞調律と心室期外収縮が交互に1拍づつ出現するもの。
・3段脈:洞調律2拍と心室期外収縮1拍のパターンを繰り返すもの。
・R on T型:心室期外収縮が先行するT波のピークから開始するもの。高率に心室頻拍、心室細動を誘発し、最も危険性が高い。
*かつては心室期外収縮を頻度と出現パターンから5つのグレードに分類した Lown分類が用いられてきたが、必ずしもグレードと生命予後とが関連しないことがその後の研究で判明し、徐々に使用されなくなった。
〈参考:Lown分類〉
Grade 0: なし
Grade 1A:散発性(30個以下/時間) 1個以下/分
Grade 1B:散発性(30個以下/時間) 1個以上/分
Grade 2: 頻発性(30個以上/時間)
Grade 3: 多源性
Grade 4A:連発性 2連発
Grade 4B:連発性 3連発(心室頻拍)
Grade 5: R on T(短い連結期)
*Grade 2以下:良性
*Grade 3〜5:複雑性不整脈 VT・Vfに移行しやしやすく、危険度が高い。
【心電図所見】
・洞調律中に予測される時相よりも早期にQRSが出現し、かつ先行するP波がない。
・QRS形態が洞調律時と異なる:幅広いQRSを形成する。通常T波は逆向きになる。
心室から発生した異常な脱分極はHis-Purkinje系(刺激伝導系)を経由しにくいために伝導速度が遅延し、体表面上ではQRS幅が120msec以上に拡大するため。
・右脚ブロック+左軸偏位の場合、左脚後枝領域のリエントリーが推測される。
左脚ブロック+右軸偏位の場合、右心室流出路領域の自動能亢進やトリガードアクティビティが推測される。
・逆行性P波や伝導しない洞性P波がみられることもある。
【臨床症状】
無症候性のことが多い。
ときに動悸、脈の結滞、胸部不快感、短時間の胸痛、乾性咳嗽などがみられる。
予後は一般に良好で、自然消退することもある。
【治療】
・無症候であれば無治療で経過を観察する。
・症候性の場合は対症的に抗不整脈薬やカテーテルアブレーションを行う。
・右脚ブロック+左軸偏位型には、ベラパミルを中心としたCaチャンネル遮断薬を使用する。
左脚ブロック+右軸偏位型には、β遮断作用を持つプロパフェノンを使用する。
・慢性的な心機能低下がある場合は予後不良を示す要因であるが、抗不整脈薬(特にⅠ群薬)による心室期外収縮の抑制はむしろ予後を悪化させる。
・心筋梗塞急性期のリドカイン使用は否定的な報告もあり、アミオダロン、ニフェカラントを使用する。
・R on T型は心室頻拍、心室細動へ移行するリスクが高いため、Ⅲ群抗不整脈薬を積極的に用いる。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-02