進行性核上性麻痺

進行性核上性麻痺
progressive supranuclear palsy (PSP)


【概念】

 40歳以降に発症する緩徐進行性の非遺伝性神経変性疾患で、垂直性核上性眼球運動障害、垂直性衝動性眼球運動の緩徐化、著明な姿勢反射障害を特徴とする錐体外路症状が中核となる。

【疫学】
 有病率は10万人あたり1.3〜1.5人。
 50〜60代に発症し、男性に多い。

【病理】

 基底核、脳幹、小脳の諸核の神経細胞が脱落変性し、ねじれのない直細管の神経原線維変化がみられる。神経細胞の脱落変性は黒質、淡蒼球-視床下核系、小脳歯状核-赤核系が主で、中脳被蓋部とくに黒質緻密部の障害が高度である。
 神経原線維変化 neurofibrillary tangle (NFT)は脳幹と大脳基底核に多くみられ、異常タウ蛋白から構成されている。異常リン酸化タウ蛋白がアストロサイトとオリゴデンドログリア内に沈着し、アストロサイト内のtuftes astrocyteが特徴的。
 尾状核、被殻、黒質のドーパミンは低下しており、中脳以下の脳幹網様体系のコリン作動性ニューロンの活動低下もみられる。

【症状】

・垂直性眼球運動障害:ほぼ必発で下方視>上方視。
・核上性注視麻痺:頭部を他動的に上下転すると眼球が動く現象。
・姿勢反射障害:初発症状に多く、易転倒性、すくみ足をともなう。
・皮質下性認知症:意欲低下、語彙流暢性低下などが晩期におこる。
・項部後屈姿勢(項部ジストニー):特徴的だが頻度は50%以下。
・パーキンソニズム:無動、筋固縮、歩行障害など。
 症状が進行すると、構音・嚥下障害、錐体路兆候、前頭葉徴候(強制把握反射)などもみられることがあり、眼球運動は全方向に不可能となる。
 平均罹病期間は約10年。

【検査】

・血液/髄液検査:特有の所見なし。
・CT/MRI:中脳被蓋部の萎縮、進行期には脳梁・前頭葉の萎縮。
・PET/SPECT:両側前頭葉の血流低下。
・MIBG心筋シンチグラム:MIBGの取り込み正常(PKとの鑑別点)。
・前頭葉機能検査(Wisconsin Card Sorting Testなど)で高率に異常が見られる。

【病期分類】

<第1期>
 不安定歩行、後方への転倒傾向、動作緩慢、霧視、発語障害、もの忘れ、易怒性
<第2期>
 垂直性眼球運動障害、項部ジストニー、歩行障害、構音障害、知能低下、仮面様顔貌、深部腱反射の亢進と病的反射陽性
<第3期>
 随意性および反射性眼球運動消失、固縮・姿勢反射異常による起立・寝返り困難、強制把握・gegenhaltenなどの前頭葉徴候、認知症、無言無動

【診断基準】

・NINDS-SPSP 1996

【サブテーマ】
進行性核上麻痺の臨床症状


【註記】


【参考】


【改訂】2017-02-01