パーキンソン病
Parkinson disease
【概念】
黒質緻密層ドパミン神経細胞の変性を主病変とし、緩徐進行性に運動4徴候(振戦、固縮、寡動、姿勢反射障害)をきたす一次性の大脳基底核変性疾患。ドパミン作動性治療が有効である。
他の疾患や薬剤等により二次性にパーキンソン症状をきたすものはパーキンソン症候群 Parkinson syndromeとして区別され、パーキンソン症状自体はパーキンソニズム parkinsonismとも呼ばれる。
【疫学】
有病率は人口10万に対し110人程度。
通常孤発性だが、家族発症例が約5%ある。
好発年齢は50〜60代。20代からの若年発症もある。
【病理・病態】
黒漆緻密層のドパミン神経変性が顕著。肉眼的には黒褐色の色調が失われ、光顕ではメラニン含有神経細胞の脱落変性、グリア細胞の増殖がみられる。残存した神経細胞の中にエオジン好性の封入体(Lewy小体)が出現する。
青班核にも神経細胞の脱落とグリオーシスがみられ、Meynert核や迷走神経背側核にもLewy小体が出現する。
黒漆緻密層のドパミン神経変性により、線条体(尾状核と被殻)でのドパミン含有量が著明に低下する。
青班核のノルアドレナリン神経変性により、大脳皮質、視床下部など広範な脳部位でノルアドレナリン含有量が低下する。
【症状】
初発症状は一側性の、手指または足の震えから始まり、対側または同側の肢に進展していく(N型またはZ型)。症状の左右差は進行期にも残る。
<四大徴候>
・安静時振戦:4〜6Hzの規則的な振戦で、随意運動時に軽減または消失する。
・固縮:筋強剛は歯車様固縮となる。
・寡動:動作が減少し、速度も遅くなる。指の巧緻動作拙劣、歩行時の腕振り減少、瞬目減少、仮面様顔貌、体位変換困難など
・姿勢反射障害:歩行時の突進現象や易転倒性など
・姿勢は前傾前屈となり、歩行は小歩症となる。すくみ足もみられる。
・自律神経障害として便秘、脂漏性顔貌などが多い。
・40%にうつ傾向、20%に認知機能低下がみられるが、認知症状が初発症状や主症状となることはない。
【検査】
・血液/髄液検査:異常なし。
・CT/MRI:異常なし。
・MIBG心筋シンチグラム:早期よりMIBGの取り込みが低下。
【治療】
主治療薬はドパミン作動性薬。
・レボドパ製剤:ドパミンを補充する。脳内で芳香族-l-アミノ酸脱炭酸酵素により脱炭酸されてドパミンとなる。
・ドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト):直接ドパミン受容体に結合してドパミン作用をあらわす。一般にレボドパより作用時間が長い。
ただし、これらの薬剤の長期使用により、薬剤誘発性ジスキネジアや精神症状が出現することもある。また、病気の進行にともない、レボドパの薬効時間が短縮し、症状の日内変動が生じることもある(wearing off現象)。
【重症度分類】
・Hoen & Yahr分類(ヤール分類)
【サブテーマ】
・パーキンソン病の臨床症状
・若年性パーキンソニズム
・パーキンソン痴呆症候群
・パーキンソン症候群
【註記】
【参考】
【改訂】2017-02-01