ピック病

ピック病 Pick disease


【概念】
 臨床的には人格障害、特有の言語症状を示し、病理学的には側頭葉・前頭葉の限局した葉性萎縮と白質のグリオーシス、Pick細胞や嗜銀球を認める疾患。

【疫学】
 好初年齢は40〜60代の初老期で、本邦では男性に多い。
 頻度はADの1/100程度。遺伝の関与は少ない。

【症状】
 臨床的には人格の変化を特徴とする。
・側頭葉症状:欲動的脱抑止(抑制がなく自己中心的で一方的、かつ一貫性のない、社会性の失われた行動を絶えず繰り返す)、行動過多、健忘性失語(無言傾向)、滞続症状(常同的な言語や行動の反復)。
・前頭葉症状;自発性の欠如。 対人的には考え不精と呼ばれる態度を示す(はぐらかすような態度)。 病期前半では明らかな認知症状は目立たず、空間失見当識や失認・失行は比較的少ない。
・錐体外路症状:Parkinson 症状を示すことがある。 末期には精神活動は全荒廃し、無言・無動(失外套症候群)となる。
・症状は確実に進行し、全経過は8〜10年である。  

【病理】
 側頭葉、前頭葉に限局した高度の葉性萎縮が見られ、その部位に神経細胞の著明な脱落と強い白質グリオーシスが見られる。側頭葉型>前頭葉型。  
 組織学的にはPick細胞(細胞体が浮腫状に膨らみ、虎斑状を失い、核が偏在した神経細胞)、嗜銀球(Pick球:神経細胞胞体内の球状の嗜銀性構造)が見られる。

【検査】
 CT/MRI:前頭葉・側頭葉の葉性萎縮がみられる。 脳波は末期まで徐波化は少ない。

【生化学】
 Ach 系のシナプス前成分は保たれており、シナプス後成分が著減している。
 正常脳に比べ、わずかに亜鉛の含有量が多い。


【註記】


【参考】


【改訂】2017-02-01