髄膜炎 meningitis

髄膜炎 meningitis


【概念】
 髄膜炎とは髄膜(主に軟膜)に生じる感染等によって起こる炎症性反応をいう。発熱・頭痛を主症状とし、髄膜刺激症状、頭蓋内圧亢進症状などを伴う。重症化すると脳炎の合併による意識障害やけいれんを起こすこともある。
 1歳以下の小児では定型的症状が著明でなく、脳浮腫によるけいれん・嘔吐、大泉門膨隆などがみられることが多い。
 症状の経過によって急性髄膜炎と亜急性髄膜炎とに大別される。急性髄膜炎は1週間以内に症状が進行し、亜急性髄膜炎は2〜6週の経過で進行する。
 急性髄膜炎には主としてウィルス感染に寄って起こる急性無菌性髄膜炎と、細菌感染によって起こる急性化膿性髄膜炎がある。通常、ウィルス性髄膜炎は1〜2週以内に自然治癒することが多いが、細菌性のものはウィルス性に比べて症状が重篤であり、速やかに治療が行われない場合は脳炎に至ることもある。
 亜急性髄膜炎(または慢性髄膜炎)の原因としては、結核菌などの細菌、真菌、癌などがある。

【分類】
1. 急性髄膜炎 acute meningitis
 1)急性無菌性髄膜炎
 ・ウィルス性髄膜炎
 ・その他
 2)急性化膿性髄膜炎

2. 亜急性髄膜炎 subacute meningitis
 ・結核性髄膜炎
 ・真菌性髄膜炎
 ・癌性髄膜炎
 ・その他

【臨床症状】
・4徴:発熱、項部硬直、意識障害、頭痛
・症状:項部硬直、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候

【主な起炎菌】
・成人:肺炎球菌>インフルエンザ菌
  その他、リステリア菌、髄膜炎菌、クリプトコッカスなど
・脳外科手術・シャント後:黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、緑膿菌など
・乳児:B群レンサ球菌、大腸菌、クレブシエラ属、インフルエンザ菌など

【診断】
・髄液検査
 脳脊髄液CSFの圧や性状により髄膜炎の診断と鑑別を行なう。
 髄液圧は一般に上昇しており、ウィルス性の場合は外見は無色透明、細菌性・真菌性・癌性では淡黄色(キサントクロミー)や日光微塵、ときに膿性を呈する。また、ウィルス性では髄液中タンパクは正常か軽度増加のみであるが、細菌性・真菌性・癌性はタンパクの上昇がより著しく、髄液中の糖が減少する。
 髄液の培養、鏡検、抗体検査等により髄膜炎の原因を特定する。
・CT/MRI
 髄膜炎においては、CT/MRIで脳浮腫合併の有無、水頭症の有無、脳梗塞の有無等を確認する。

【治療】
1)ターゲットセラピー
 起炎菌が明らかな場合、原則としてターゲットセラピーを行う。
2)エンピリックセラピー
 次のような症例が対象となる。
 ・乳頭浮腫や頭蓋内圧亢進を疑い腰椎穿刺ができない例
 ・意識障害が強く、少しでも早く抗菌薬療法を行うべき例
 ・髄膜炎に合致した髄液所見を呈するがG染色で起炎菌が同定できない例
 成人の場合、原則としてセフトリアキソン(ロセフィン)またはセフォタキシム(セフォタックス)にバンコマイシンを併用する。
 広域セファロスポリン薬およびバンコマイシンにアンピシリン(ビクシリン)またはST合剤を加えることもある。
 新生児の場合、アンピシリンとゲンタマイシンの併用、またはアンピシリンとセフォタックスの併用が推奨される。

メニンギスム(髄膜症)meningism

 急性の熱性疾患において、頭痛、項部硬直・Kernig兆候などの髄膜刺激症状をみとめ、いっけん髄膜炎様の臨床症状を呈するが、髄液検査等では髄膜炎の所見がないものをいう。
 髄液検査では圧の上昇はみられるが、タンパク・細胞・糖は正常であり、Clの低下がみられることがある。


【参考】
・Medical Practice 2019 臨時増刊号 vol.36 「髄膜炎」金光敬二