肢帯型筋ジストロフィーの主な病型
Ⅰ 常染色体優性遺伝形式(LGMD1型)
1. LGMD1A
ミオチリンをコードする遺伝子MYOTの変異による。ミオチリンはZ線に局在する蛋白質で、筋原線維配列維持に重要な役割りを担っている。
発症年齢は60歳前後。近位筋の筋力低下で発症し、時に開鼻声、構音障害や顔面筋罹患を伴う。心筋障害、呼吸障害の合併もある。
病理的には筋原線維走行の乱れと、筋細胞内の蛋白質凝集体が特徴的。
2. LGMD1B
核ラミナの主要構成成分であるラミンA/Cをコードする遺伝子LMNAの変異による。
乳児期に発症する重症型から成人発症まで幅があるが、幼児期に下肢近位筋優位の進行性筋力低下、易転倒性で発症することが多い。
腓腹筋仮性肥大をしばしば伴い、肘関節の屈曲拘縮や、アキレス腱短縮による尖足、強直性脊椎症候群などもみられる。
合併症として房室ブロックや不整脈を伴う心筋症がある。
CK上昇は一般に軽度で、病理上壊死・再生所見に乏しく、筋線維の大小不同、結合組織の増生を認める。乳児期発症例では炎症細胞浸潤が強い。
LMNA変異はEDMD、家族性拡張型心筋症、リポジストロフィー、早老症候群、CTM2B1型などの原因にもなる。
3. LGMD1C
カベオリン3をコードする遺伝子CAV3の変異による。カベオリン3は筋線維膜直下に局在するカベオラの構成蛋白である。
CAV3変異の臨床症状は多岐にわたり、発症は小児期であるが、典型的LGMD症状を呈する例や、遠位筋障害が強い例、筋痛が強い例、rippling muscle diseaseを呈する例のほか、肥大型心筋症、QT延長症候群の原因ともなる。
4. LGMD1D
DNAJB6をコードする遺伝子DNAJB6の変異による。DNAJB6はZ線に局在し、分子シャペロンとしての役割を果たす。
一般に30〜60歳代で発症し、中等度から重度の近位筋優位の筋障害を呈する。大腿直筋は比較的保存され、生涯歩行可能な例もあり、遠位型ミオパチーを示す例もある。
呼吸不全、心筋症は合併しない。
病理上、自己貪食空胞と蛋白凝集が特徴的。
5. LGMD1E
筋特異的中間径フィラメントのデスミンをコードする遺伝子DES変異による。
10〜20歳代で発症し、進行性の近位筋の筋力低下と心伝導障害、拡張型心筋症を呈する。
病理上、筋原線維ミオパチーの特徴を持つ。
6. LGMD1F
トランスポーチン3をコードする遺伝子TNPO3変異による。
10歳代〜成人期に下肢筋力低下で発症するが、早期発症例ほど症状が重い。
ヨーロッパ家系から報告があり、わが国の報告例はない。
Ⅱ 常染色体劣性遺伝形式(LGMD2型)
1. LGMD2A
カルパイン3遺伝子CAPN3変異による。カルパイン3は骨格筋特異的プロテアーゼであり、筋原線維においてタイチンと結合する。
思春期以降に歩行困難、階段昇降困難などで発症し、進行性の筋力低下をきたす。
心筋障害はなく、呼吸障害もまれで、関節拘縮はきたしにくい。
病理上、筋線維の大小不同、中心核増加、肥大線維、筋原線維間網の乱れなどを認め、進行例では小径化したタイプ1線維に高頻度に分様構造を認めるのが特徴的。
2. LGMD2B
筋細胞膜蛋白質ジスフェルリンをコードする遺伝子DYSFの変異による。ジスフェルリンは筋細胞膜に局在し、膜修復に関与すると考えられている。
思春期以降に下肢筋力低下で発症し、緩徐進行性の筋力低下により、発症から5〜20年で車椅子生活となる。心筋障害、呼吸障害はきたしにくい。
CKは数千IU/Lと高値になり、初期から下腿の腓腹筋内側頭が障害される。
3. LGMD2C〜2F(サルコグリカノパチー)
サルコグリカン(SG)はα-、β-、γ-、δ-SGの4つで複合体を形成しており、LGMD2C〜2Fはこれらの蛋白質をコードする遺伝子の変異による。いずれのタイプも複合体全体が減少し、筋細胞膜の脆弱性を生じる。
DMD類似の症状を呈する小児期発症の悪性肢帯型(severe childhood autosomal recessive muscular dystrophy : SCARMD)からBMD類似の成人発症例まで重症度はさまざまである。腓腹筋肥大、呼吸障害、心筋障害をきたすが、知的障害は認めない。血清CK値は正常の10倍以上の高値となる。
アラブ、ヨーロッパ系に多く、わが国ではまれ。
4. LGMD2G
テレソニンをコードする遺伝子TCAPの変異による。テレソニンはタイチンのN末端や他のZ線蛋白と結合する。
青年期に腰帯筋、下肢近位筋の筋力低下で発症し、筋力低下は徐々に遠位におよび、腓腹筋肥大を伴う。わが国からの報告はない。
5. LGMD2I、2K、2M、2N、2O(α-ジストログリカノパチー)
筋細胞外に存在するα-ジストログリカン(α-DG)は糖鎖構造を有しており、この糖鎖就職に関与する遺伝子はFKRP、POMT1、FKTN、POMT2、POMGnT1が知られている。これらの変異による疾患群はα-ジストログリカノパチーと呼ばれる。
LGMD2MはFKTN遺伝子の変異により、この遺伝子は福山型先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子でもある。
LGMD2Mは幼児期に発症し、拡張型心筋症を主症状とし、骨格筋障害は比較的軽いが、下腿の仮性肥大は著明である。中枢神経障害や眼症状はきたさない。血清CKは正常の10倍以上の高値を示し、ステロイド投与で症状改善がみられることもある。海外では頻度が高いが、わが国ではまれ。
6. LGMD2J
タイチン遺伝子TTNの変異による。タイチンはZ線とM線をつなぐ巨大蛋白質である。
TNN変異は前脛骨筋型ジストロフィーや拡張型心筋症の原因にもなる。
わが国からの報告はない。
7. LGMD2L
アノクタミン-5をコードする遺伝子ANO5の変異による。アノクタミン-5は膜タンパクで、Ca2+依存性Clチャネルである。
20歳〜55歳と成人発症で、生涯歩行可能例も多い。関節拘縮、呼吸障害、心筋障害は通常みられない。血清CKは正常値の10〜20倍に達する。
北ヨーロッパでは最も頻度が高いが、わが国ではまれ。
【註記】
【参考】
・齊藤利雄「肢体型筋ジストロフィー -サルコグリカノパチーを含めて-」:小児内科 Vol.48 No.12 2016
【作成】2017-03-08