レジオネラ症 legionellosis

レジオネラ症 legionellosis


【概念】
 レジオネラ属細菌を原因とする感染症で、菌に汚染されたエアロゾルの吸入で発症する肺炎を呈することが多い(市中肺炎の3〜5%)。

【病原菌】
 レジオネラ属には40菌種以上が知られているが、病原性が最も強いのは Legionella pneumophiliaで、レジオネラ肺炎全体の60〜70%を占める。
 レジオネラ菌は細胞内寄生性を示すG陰性ブドウ糖非発酵菌で、自然界の水系・土壌に広く存在する。菌で汚染された水のエアロゾロルを感受性宿主が吸入することで肺炎を発症する。しばしば集団感染が起こる。
 レジオネラ肺炎以外では、ポンティアック熱(インフルエンザ様症状のみで肺炎を伴わないもの)、免疫不全宿主における化膿性疾患などもある。

【臨床症状】
 潜伏期間は2〜10日
 初発症状は発熱、全身倦怠感、筋肉痛、食欲不振などの非特異的症状。
 次第に咳、痰、胸痛などの呼吸器症状が前面に出てくる。
 頭痛、傾眠、昏睡、脳炎症状などの精神神経症状がしばしばみられる。
 肺雑音、相対的徐脈、低血圧、低酸素血症などもみられる。
 胸部X線検査で特異的所見はないが、多発性陰影や胸水貯留を示すことが多く、膿胸に進展する例もある。
 血液検査では軽度の肝機能障害、CK上昇、低ナトリウム血症、低リン血症などもみられる。
 重症例ではARDS、DIC、多臓器不全に進展する。
 免疫不全宿主におけるレジオネラ症の死亡率は10〜20%と高い。
 現在、ヒトからヒトへの伝播は報告されていない。

【診断】
・塗抹培養検査:G染色では染色されにくく、Gimenez染色またはアクリジンオレンジ染色で細胞内増殖を示す菌が観察される。
 培養にはBCYE-α培地やWYO培地などの特殊培地が必要で、通常4〜7日で灰白色大小不同のコロニーが観察される。
・血清抗体価測定:ペア血清で4倍以上の抗体価上昇、または単独血清で256倍以上が陽性。
・尿中抗原検出:免疫クロマトグラフィー法による迅速診断が可能。
 ただし、L. pneumophila血清型1(レジオネラ肺炎の40〜50%)のみが対象となる。
・遺伝子診断:PCR法による。

【治療】
・ヒトのマクロファージ/単核球内での増殖を特徴とする細胞内寄生菌であるため、細胞内移行性の低いβラクタム、アミノグリコシド系は無効。
・抗菌活性が強く細胞内移行性の高いマクロライド系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬が第一選択となる。その他、リファンピシン併用療法やST合剤なども有効。


【註記】


【参考】


【作成】2017-06-14