ラッサ熱 Lassa fever

ラッサ熱 Lassa fever (LF)


【概念】
 西アフリカ諸国で流行する重篤な感染症で、ラッサウイルスが原因となり、ネズミにより媒介される。
 1969年にナイジェリアで発見された。

【病原体】
 アレナウイルス科アレナウイルス属のラッサウイルス Lassa virus(—鎖1本鎖RNA)。
 ウイルスはマストミス属のネズミの腎臓で増殖し、排泄物中に大量に排泄される。

【疫学】
・西アフリカの広範な地域に分布し、乾季に流行する。
 年間10〜30万人の患者が発生していると推定され、先進国では輸入症例が多い。
・感染様式:接触感染、飛沫感染
 ウイルスを含むネズミの排泄物に直接触れたり、汚染食物を摂取することにより感染する。ヒト−ヒト感染は粘膜接触(性交渉)では起こるが、通常の皮膚接触では起こらない。
・伝播可能期間:ウイルス血症を伴う有熱期の2〜3週間
・1類感染症

【臨床症状】
・潜伏期間:5〜21日
・初発症状:発熱、倦怠感
・高熱、筋肉痛、消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢)、滲出性咽頭炎、胸骨背部痛、結膜炎、胸水貯留、粘膜出血、難聴、振戦、脳炎など、さまざまな症状を示し、特異的なものはない。
・咽頭炎は白苔を伴い、頸部リンパ節腫脹を認めることも多い。
・出血症状は患者の約30%に見られる。
・他のウイルス性出血熱に比べて経過が長く(約3週間)、重症例では意識障害(脳炎、脳症)や腎不全を合併する。
・致死率は感染者の1〜2%、入院患者の15〜20%。
 妊娠後期の妊産婦や胎児の死亡率はより高い。
・症状やウイルス血症は2〜3週持続し、解熱期にはウイルス血症は消失する。
・検査所見にも特異的なものはない。

【合併症】
・重症患者に聴覚障害
・妊産婦で流産

【診断】
・血液、尿、粘膜擦過標本からのウイスル分離
・血清IgM、IgG抗体の検出
・PCR法による病原体遺伝子の検出

【治療・予防】
・早期のリバビリン投与(発症6日以内)で死亡率が抑制される。
・有効なワクチンはない。


【註記】


【参考】
・加藤康幸「ウイルス性出血熱」:日医雑誌 第146巻第2号 2017


【作成】2017-01-02
・2017-06-03改訂