高血圧性脳症 hypertensive encephalopathy
【概念】
著しい血圧上昇に伴い、頭痛、悪心・嘔吐、視覚障害、意識障害、痙攣などを呈する病態。
血圧の急激な上昇や慢性で著しい高血圧により、脳血管の自動調節脳の閾値を超えると、血管内皮細胞の障害、血液脳関門の破綻が生じ、血管透過性が亢進し、血管原性脳浮腫がおこる。
慢性的な高血圧患者では220/110mmHg以上で、急性の高血圧患者では160/100mmHg以上で発症しやすい。
【臨床症状】
激しい頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、痙攣、うっ血乳頭、視力障害など。
ごくまれに巣症状をきたす。
【検査所見】
頭部MRI(T2強調、FLAIR)にて両側頭頂葉〜後頭葉の白質を中心に、皮質に及ぶ高信号を認める(posterior reversible encephalopathy syndrome : PRES)。ただし、PRESは他疾患(子癇、免疫抑制治療、骨髄移植、輸血、エリスロポエチン投与など)でもみられることがある。
血管原性浮腫の場合、拡散強調画像では等信号〜軽度高信号、ADC mappingでは高信号を呈することが多い。
【経過・予後】
早期の適切な降圧治療が行われれば、神経症状、画像所見ともに可逆的であり、予後は比較的良好。
治療が遅れた場合、神経症状は不可逆的となり、意識障害の進行から死に至ることもある。
【治療】
即効性の降圧薬(ジルチアゼム、ニカルジピンなど)の持続静注を開始し、2〜3時間で25%程度の降圧を図る。その後数時間で降圧目標に達したら経口内服薬に切り替える。
必要に応じ、抗浮腫薬や抗痙攣剤を使用する。
【参考】