単純ヘルペスウイルス Herpes simplex virus
【概念】
ヘルペスウイルス科α-ヘルペスウイルス亜科の単純ウイルス属にはヒトヘルペスウイルス1型(単純ヘルペスウイルス1型)およびヒトヘルペスウイルス2型(単純ヘルペスウイルス2型)の2種が含まれる。これらは74個の遺伝子のうち、90%以上が相同性を持ち、抗原もかなり交叉するが、1型は主に口腔内や口唇、角膜、脳などに疾患を起こす一方、2型は主に性感染症である性器ヘルペスを起こす。
【疾患】
1)単純疱疹(口唇ヘルペス、性器ヘルペス)
→該当項目参照
2)ヘルペス性歯肉口内炎
→該当項目参照
3)ヘルペス脳炎
→該当項目参照
4)角膜ヘルペス
三叉神経領域の粘膜のヘルペス疹と考えられる。
樹枝状角膜炎は角膜上皮のびらんに留まるものをいう。
円板状角膜炎は角膜上皮のびらんを繰り返すうちに、炎症細胞が角膜実質に浸潤したもので、混濁により失明することがある。
5)ベル麻痺 Bell palsy
原因不明の顔面神経麻痺をベル麻痺と呼び、年間10万人あたり20〜30人が発症する。このうち20%程度がHVSによるものとみられている。
顔面神経は主に運動神経だが、知覚神経が一部混合しており、この知覚神経でHSVが再活性化すると並走する運動神経で脱髄が起こるとともに、骨で閉鎖された空間内での神経浮腫による絞扼と虚血が起こり、顔面神経麻痺が生じる。
6)新生児ヘルペス
胎児にHVSが胎児に感染した場合は、多くが流産・死産となる。
新生児ヘルペスは産道感染や新生児期の水平感染によるもので、皮膚や粘膜の感染に留まるものは予後が良いが、感染が中枢神経系に及ぶと予後が悪く、半数近くが死亡する。
【治療】
・アシクロビルとそのプロドラッグであるバラシクロビル、ビダラビンが有効。ただしこれらの薬剤は潜伏感染しているウイルスを排除することはできない。
・脳炎や円板状角膜炎ではウイルスに対する過剰な免疫反応が病態を悪化させているため、ステロイドなどによる免疫抑制療法を併用する。
【註記】
【参考】
【作成】2017-01-01