手足口病
hand, foot and mouth disease (HFMD)
【概念】
エンテロウィルス感染により口腔と手足末端に水疱性発疹を来す疾患。
【病原体】
エンテロウィルス属 enteroviruses、主にコクサッキー coxsackie A16 、エンテロウィルス enterovirus 71 など。EV71は中枢神経系合併症の発生率が高い。
【疫学】
・5類感染症、第4類定点把握疾患(小児科定点)
・季節:流行のピークは夏期
・好発年齢:乳幼児(大半は2歳以下)
【感染経路】
飛沫感染、糞口感染、水疱内容からの直接感染。
急性期がもっとも感染力が強いが、症状回復後も2〜4週程度は便からウィルスが排泄される。
【臨床症状】
・潜伏期:約3〜5日。
・水疱性発疹:口腔粘膜および四肢末端に現われ、水疱は肘や膝、臀部に拡がることもある。水疱は径2〜5mmで楕円状で、痂皮を形成せずに治癒する。
・発熱:発症者の約1/3に軽度の発熱があるが、通常、高熱が続くことはない。
・基本的には数日間のうちに治癒し、いったん罹患すると病原ウィルスに対する免疫は成立する。ただし、その後も異なったタイプのウィルスには罹患しうる。
【合併症】
まれに髄膜炎、小脳失調症、急性弛緩性麻痺、脳炎などの急性中枢神経系合併症がみられる。
【検査】
・ウィルスは咽頭拭い液、便、直腸拭い液、水疱内容などから分離される。
・血清検査ではペア血清:補体結合反応 (CF)よりも中和反応(NT)の方が精度がよい(エンテロウィルス間での交差反応がないため)。
【治療・予防】
通常、数日のうちに自然治癒する。嚥下痛による脱水に注意。
回復後も便からのウィルス排泄が続くため、厳密な流行阻止は期待できない(学校保健法に規定なし)。
【註記】
【参考】
・岡部信彦:日本医師会雑誌臨時増刊号 第122巻 第10号 2000
・国立感染症研究所HP:2014
【作成】2016-12-15