帯状疱疹 Herpes zoster

帯状疱疹 Herpes zoster


【概念】

 神経節に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウィルス(VZV)の再活性化によって生じる疾患で、疼痛、水疱が神経分布に一致した領域に出現する。
 7人に1人が発症する頻度の高い疾患で、高齢者に多いが20歳代にも小さなピークがある。

【病原菌】

 ヘルペスウィルス科のα-ヘルペス亜科に属する水痘帯状疱疹ウィルス varicella zoster virus (VZV)。初感染時は水痘(みずぼうそう)として発症し、治癒後ウィルスは知覚神経の軸索流に乗って後根神経節などへ輸送され、神経細胞内で潜伏感染状態となる。その後加齢や免疫力の低下により回帰発症として帯状疱疹をおこす。

【症状】

・神経痛様の痛みが先行し、赤みを伴った小水疱の集簇が、片側性に知覚神経の分布に一致して出現する。
・一般に疼痛の程度は強く、特に50歳以上では皮疹の治癒後も痛みや感覚異常が長期間残ることがある(帯状疱疹後神経痛 post-herpetic neuralgia : PHN)。
・免疫不全患者(特に細胞性免疫低下)で播種性帯状疱疹になることがある。

【合併症】

・ラムゼイ・ハント症候群 Ramsay Hunt syndrome
 顔面神経の膝神経節、内耳神経領域に帯状疱疹が発症すると、耳介部、外耳道に水疱が出現するとともに、顔面神経麻痺、味覚障害、難聴、めまいなどの症状がおこる病態。
 ① 外耳道、耳介と口腔内の発疹
 ② 顔面神経麻痺
 ③ 内耳神経症状:耳鳴り、難聴、めまいなど
を3徴とする。

【検査】

・Tzack試験:水疱内容の塗抹標本をGimsa染色し、ウィルス性巨細胞を検出する
・VZV抗原の検出:VZV特異抗体で塗抹細胞を染色する。単純疱疹との鑑別に有用。

【治療】

・軽症〜中等症:バラシクロビル塩酸塩またはファムシクロビル内服。
・重症:アシクロビル点滴静注。
・PHN:プレガバリンまたはトラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合剤内服。
・発症早期にバラシクロビル治療を行うと、PHNの頻度を低下できる。
・水痘ワクチン追加で帯状疱疹の発生頻度を低下させることができ、米国では60歳以上を対象にワクチン接種が始まっている。


【註記】


【参考】


【作成】2016-12-16