血行力学性梗塞 hemodynamic infarction
【概念】
脳主幹動脈に高度狭窄や完全閉塞があるが、その遠位の頭蓋内血管が限界まで拡張し局所脳血流をかろうじて代償維持している状態に対し、血圧低下や脱水により脳灌流圧が低下することにより局所脳血流も低下し、最も灌流圧の低い灌流終末・分水嶺領域に虚血性梗塞がおこるもの。
【臨床症状】
脱水、心拍出量低下、降圧薬内服などによる全身血圧低下に応じて脳灌流圧が低下したときにおこる。
一過性または進行性の意識障害、言語障害、運動麻痺、limb shaking(短時間の不随意かつ粗大で不規則な痙攣様ふるえ)などが主症状。
【検査】
・画像検査で分水嶺(中大脳動脈と前大脳動脈、または後大脳動脈との灌流境界)に帯状の梗塞巣がみられる。
・MRI拡散強調画像で高信号域が血管支配領域の一部にしか認められないのにかかわらず、
① 灌流強調画像における平均灌流時間 mean transit timeの遅延が広範囲である乖離 diffusion/perfusion mismatch
② MRAでの基幹部の動脈閉塞の灌流領域との乖離 diffusion/MRA mismatch
③ 重篤な臨床症状と乖離 diffusion/ clinical mismatch
などの所見が診断に有用。
・発症3週間以降経過した亜急性期における血行再建を念頭に置いたペナンブラ評価の診断基準は、
① 脳血流定量SPECT検査で、灌流領域の安静時脳血流が正常値の80%以下
② 血管拡張作用のあるアセタゾラミドを負荷しても血流増加が10%以下、または減少(脳内盗血症候群)
・ポジトロンCT:同部位の局所脳血流の低下と酸素摂取量の上昇(貧困灌流状態 misery perfusion)。
【参考】