遺伝性ジストニア hereditary dystonia
【ジストニア】
ジストニア dystoniaとは中枢神経系の障害に起因し、骨格筋の持続のやや長い収縮で生じる兆候。
・ジストニア姿勢 dystonic posture:異常姿勢・異常肢位
・ジストニア運動 dystonic movement:ゆっくりとした捻転様の運動
特定の随意運動時に出現または増強するものを動作性ジストニア action dystoniaといい、ジストニア姿勢・ジストニア運動の両者が生じうる。
明らかな痙縮、固縮、拘縮、痙攣によるものは含まれない。
【遺伝性ジストニア】
遺伝性ジストニアとは遺伝子の異常によりジストニア症状を主とするさまざまな症状を呈する疾患をいい、近年多くの原因遺伝子が同定されている(DYTシリーズ)。2016年現在ではDYTシリーズは25以上に上るが、わが国に比較的多いのはDYT1ジストニアとDYT5ジストニアである。
1. DYT1ジストニア
(=捻転ジストニア torsion dystonias、変形性筋ジストニア dystonia musclorum deformance、Oppenheimジストニア)
常染色体優性遺伝で、多くは20歳以前に発症する。
原因遺伝子は第9染色体9q34にあり、遺伝子産物は torsion 1A。DYT1遺伝子でのGAG欠失がある。
アシュケナージ系ユダヤ人に多いが、すべての民族にみられる。
多くは一側下肢に発症し、全身にジストニアが拡がる。
5〜10年で進行し、罹患部位の変形による内反尖足などをきたす。
頸部では屈曲、捻転、上半身では捻転運動、異常姿勢による著しい屈曲をきたす。脊椎側弯、後弯、骨盤捻転も生じ、歩行困難となる。
知能は正常。
2. DYT5ジストニア
(=瀬川病 Segawa disease、日内変動を伴う遺伝性進行性ジストニア hereditary progressive dystonia with marked diurnal fluctuation)
常染色体優性遺伝で、多くは10歳以下で発症する。不完全浸透で女性に多い。
原因遺伝子は第14染色体14q22.1-q22.2で、病因はGTP cyclohydrolase 1 (GCH 1)遺伝子の変異である。GCH 1の酵素活性低下があり、髄液ビオプテリンやネオプテリンの濃度低下がみられる。
下肢優位の一側性の姿勢ジストニア(下肢の尖足または内反尖足)が主症状で、立位時に腰椎前弯や頸部後屈、後膝反跳がおこる。体幹の捻転ジストニアはおこらない。
症状に日内変動があり、昼から夕方にかけて悪化し、睡眠によって改善する(成人発症例では日内変動の程度が減少する)。
10歳以降で姿勢時振戦が出現し、軽度の筋強剛がみられ、深部腱反射は更新する。知能は正常。
【註記】
【参考】
【改訂】2017-02-01