鼻疽 glanders・類鼻疽 melioidosis

鼻疽 glanders・類鼻疽 melioidosis


【概念】
 いずれもバークホルデリア属の好気性G陰性桿菌による感染症で、ともに人獣共通感染症であり、感染症法で四類感染症に指定されている。
 アジア、アフリカ、オーストラリア、中東地域などで散発的に発生しているが、米国CDCによりバイオテロに使用される危険を指摘されている。

〈鼻疽 glanders〉
【病原菌】
 鼻疽菌 Burkholderia malleiは主にウマやロバに感染し、それらの動物を介してヒトに感染する。

【臨床症状】
 潜伏期間1〜14日。
 化膿性感染(創部感染、鼻粘膜潰瘍、多発関節炎)を起こし、肉芽腫性の病変を形成する。区域性のリンパ節炎を伴うことが多い。肺炎や肺膿瘍を発症することもある。
 敗血症をきたすとしばしばショックや多臓器不全に陥る。
 慢性感染では多発性の皮下、筋肉、内臓の膿瘍を形成する。

〈類鼻疽 melioidosis〉
【病原菌】
 類鼻疽菌 Burkholderia pseudomalleiは土壌や地水など環境中に広く存在し、ときに動物にも感染するが、ヒトへは直接感染することが多い。土壌中の菌を吸い込んだり、皮膚の傷口から侵入する。

【臨床症状】
 潜伏期間3〜21日。
 肺炎、気管支炎や皮膚感染で発症する。
 肺炎では咳、痰、高熱、胸痛を認め、重症例では血痰がみられる。
 皮膚では結節性病変とともにリンパ節炎を伴う。
 免疫不全患者では敗血症に進展しやすく、予後不良。

【検査・診断】
 血液検査では軽度〜中等度の白血球増多を認める。
 肺感染症では胸部X線で浸潤影、結節影、空洞などさまざまな所見がみられる。
 腹部超音波検査やCTで深部膿瘍が見つかることもある。
 診断は渡航歴、検体からの菌の培養・分離、血清抗体価測定などによる。

【治療】
 鼻疽に対してはアミノグリコシド、テトラサイクリン、ST合剤が有効。
 類鼻疽に対してはカルバペネム、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ST合剤が有効。
 膿瘍形成がある場合、外科的ドレナージなども必要となる。
 ワクチンはないが、菌暴露後の発症予防にはST合剤が推奨される。


【註記】


【参考】


【作成】2017-07-03