ガス壊疽 gas gangrene
【概念】
ガス産生菌による進行性に皮膚軟部組織の感染症。狭義にはクロストリジウム属によるものをいい、広義にはそれ以外のガス産生菌(ストレプトコッカス属、大腸菌など)によるものも含む。
【病原菌】
クロストリジウム属は偏性嫌気性、芽胞形成性のG陽性桿菌で、芽胞の形態で土壌中に広く生息し、汚染された創傷部位から体内に侵入する。
原因菌はウェルシュ菌 Clostridium perfringensが最も多いが、C. novyi, C. septicum, C. histolyticumなどもある。
外傷後24〜72時間で、侵入した菌が産生する組織障害性の外毒素(レシチナーゼ、プロテアーゼ、コラゲナーゼなど)により蜂巣炎、筋膜炎、筋壊死などが起こる。
ウェルシュ菌は産生する毒素(α、β、ε、ι)の産生性からA〜Eの5つの毒素型に分類されるが、ガス壊疽の原因菌の多くはA型菌である。また、A型ウェルシュ菌の中にはエンテロトキシンを産生するものもあり、感染毒素型の食中毒の原因にもなりうる。
【臨床症状】
初期は感染局所の皮膚発赤、紅斑、腫脹、圧痛。
その後急激な疼痛の悪化、悪寒、発熱、血圧低下をきたす。
ガス発生が進むと、病変部の触診時に皮下の握雪感がある。
皮膚は茶褐色、黒色に変色し、水疱や表皮剥離がみられる。
進行するとDIC、多臓器不全、毒素による心原性ショックなどに進展する。
【検査】
塗抹顕微鏡検査、培養検査、血液培養検査などで起炎菌の同定
血液・生化学検査:白血球増加、炎症反応、DIC、多臓器不全など
単純X線、CT:感染部位の皮下軟部組織、筋肉内のガス像
【治療・予防】
・創傷部位のデブリドマンは予防効果がある。
・外科的処置後の創部の高圧酸素療法も有効。
・抗生剤:初期には経験的にカルバペネム系。クロストリジウムと判明後はペニシリン系。
・クリンダマイシンは菌の毒素産生を抑制する効果がある。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-10