伝染性紅斑 exanthema infectiosum

伝染性紅斑(リンゴ病)
exanthema infectiosum


【概念】

頬の蝶形紅斑および四肢のレース状紅斑をきたす学童に多い伝染性疾患で、ヒトパポバウィルスによる。

【病原体】

 ヒトパポバウィルス human parvovirus B19。
 パルボウィルス科パルボウィルス亜科エリスロウィルス属に属し、エリスロウィルスB19とも呼ばれる。
 ウィルスは上気道に感染し、ウィルス血症を起こす。赤血球膜表面にあるP抗原を受容体とし、P抗原保有細胞、特に赤芽球前駆細胞に感染し増殖する。体内では主に骨髄で増殖し、ウィルスに感染した赤芽球系細胞が破壊され、赤血球産生が停止するが、ウィルス血症消失とともに回復する。

【疫学】

・感染症予防法4類、学校伝染病3種
・感染経路:飛沫感染、接触感染
・好発年齢:学童期を中心とする小児。
・経過:一過性で不顕性感染も多い。

【臨床症状】

・潜伏期:14〜18日(約2週間)
・多くは前駆症状なしに発熱、顔面の発疹で発症する(発熱はみられないことも多い)。
・頬部の対称性斑状丘疹が融合してびまん性の蝶形紅斑となるが、口周囲には発疹はみられない。
・数日後に四肢に網目状・レース状紅斑が出現し、掻痒感を伴うことがある。発疹は10日前後で色素沈着や落屑を残すことなく消退する。
・発疹は消退後も外的皮膚刺激で再燃することもある。
・発疹が出現する頃にはウィルス血症は消失しているので、感染力はない。
・発熱はあっても軽度。

【合併症】

・ときに関節炎。成人女性に頻度が高い。
・溶血性貧血の患者では、急速に貧血が進行する骨髄無形成発作(無形成性クリーゼaplastic crisis)がみられることがある。
・妊婦が早期に罹患すると胎児水腫や流産が生じることがある。
・免疫不全患者が感染すると持続感染により強度の貧血がおこることもある。

【検査】

・血液検査:発疹に前後して網状赤血球の著減→著増。
・特異的IgM抗体:感染後10〜14日で陽性となり、6〜8週間持続する。
・IgG抗体:IgM抗体より遅れて出現し、終生持続する。
・ウィルス血症期には血液中よりPCRによるウィルスDNA検出可能。

【治療】

・対症療法のみ。


【註記】


【参考】


【作成】2016-12-23