ジフテリア diphteria

ジフテリア diphtheria


【概念】
 ジフテリア菌の感染によって生じる上気道粘膜疾患であり、咽頭ジフテリアが最も多い。菌から産生された毒素により気道閉塞や心筋炎などが起こり、致死的となりうる。
 感染症法二類感染症。

【病原菌】
 ジフテリア菌 Corynebacterium diphtheriaeはG陽性桿菌で、3種類のバイオタイプ(gravis型、mitis型、intermedius型)に分類されるが、病原性との間に密接な関係はない。
 毒素産生菌、非産生菌ともに重症化の可能性がある。
 咽頭の他、眼瞼結膜、中耳、陰部、皮膚などにも感染を起こし、飛沫感染する。
 Corynebacterium ulceransは、もともとウシの常在菌だが、ジフテリア毒素産生能をもつ菌となることがあり、ジフテリア様の臨床像をきたす場合がある。人獣共通感染症で、一般にウシやヒツジとの接触、生乳の摂取により感染する。 

【臨床症状】
 潜伏期間2〜5日
 初発症状は発熱、咽頭痛、嚥下痛など
 鼻ジフテリアでは血性の鼻汁、鼻孔・上唇のびらんがみられる。
 扁桃・咽頭ジフテリアでは扁桃・咽頭周辺に白〜灰白色の偽膜が形成されるのが特徴。
 ジフテリアの偽膜は厚く、境界は鋭利で剥がれにくく、剥がすと出血しやすい。
 頸部リンパ節炎も特徴的で、高度に腫脹すると牛頸 bull neck状になる。
 喉頭ジフテリアは咽頭ジフテリアから発展する場合が多く、嗄声、犬吠様咳嗽が特徴的(真性クループ)。気道にも偽膜が形成され、呼吸困難が生じる。偽膜形成が声門、気管支まで進展すると気道閉塞をきたし、窒息死に至ることもある。
 合併症としては早期(1〜2病週)および回復期(4〜6病週)に現れる心筋炎が重要。
 末梢神経炎による神経麻痺は頻度は高いが、予後は比較的良好。

【診断】
・病変部位からのジフテリア菌分離
・PCR法によるジフテリア毒素遺伝子の検出
・感染後の抗体上昇は著明でなく、抗体価による診断は困難。

【治療・予防】
・抗生剤はペニシリン系、マクロライド系に感受性がある。
・ウマ由来の血清療法も有効(アナフィラキシーに用心)。
・1948年よりジフテリア単独ワクチン接種開始。
 1958年よりジフテリア・破傷風混合ワクチン開始。
 1968年よりジフテリア百日咳破傷風(DPT)三種混合ワクチン開始。
 2012年より不活化ポリオワクチンを加えたDPT-IPV四種混合ワクチン開始。


【註記】


【参考】


【作成】2017-06-10