脳静脈洞血栓症 cerebral venous sinus thrombosis (CVST)

脳静脈洞血栓症
cerebral venous sinus thrombosis (CVST)


【概念】
 脳静脈洞が種々の原因による血栓で閉塞され、頭痛などの脳圧亢進症状をきたすもので、血栓が静脈洞から脳表静脈におよぶと脳局所症状を呈する。
 病変は脳静脈洞の血栓性閉塞が主体だが、脳表静脈に血栓が進展した場合には大脳皮質に出血性梗塞がみられることもある。
 原因は多彩で、経口避妊薬や血液疾患による血液凝固能亢進によることが多い。

【臨床症状】
 脳静脈洞炎による血流還流障害により、頭痛、嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状が主体となる。
 発熱、意識障害、脳局所症状としての四肢不全麻痺や痙攣発作などもみられる。
・上矢状静脈洞血栓症:痙攣発作や意識障害、下肢に強い不全片麻痺(両側性)、脳ヘルニアなど。
・横静脈洞血栓症:脳圧亢進症状、難聴、半盲、ゲルストマン症候群など。
・海綿静脈洞血栓症:眼球突出、眼球結膜充血、眼球運動障害(外眼筋麻痺)、三叉神経1・2枝障害(Tolosa-Hunt症候群)など。
・脳深部静脈(内大静脈、Galen大静脈)血栓症:基底核や視床の出血性梗塞による頭痛、発熱、意識障害、両側錐体路症状など。

【検査所見】
・CT:血管支配に一致しない境界不鮮明な出血性梗塞、脳浮腫を脳表中心に認める。
・造影CT:上矢状静脈洞後半部での静脈洞内欠損像 empty delta signを呈する。
・MRI:罹患静脈洞のflow void信号の消失、T1強調像で等〜高信号、T2強調像で低信号を呈する。
・MRA:静脈相で閉塞した静脈洞を欠損像 non-visualizationとして描出できることがある。
・脳血管造影:静脈相で静脈洞閉塞や怒張した側副血行路 cork screw signがみられる。
・血液検査:白血球の軽度増加
・血液凝固線溶系検査:PTやAPTTは正常、FDPとDダイマーが増加。

【治療】
 抗脳浮腫療法に抗凝固療法(ヘパリン)や血栓融解療法(ウロキナーゼ)を併用する。
 マイクロカテーテル留置による直接的血栓溶解療法を行うこともある。
 静脈洞血栓症は急性期の脳圧亢進状態を乗り切れば一般に予後は良好。
 上矢状静脈洞血栓症では痙攣重積状態をきたすことがある。
 脳深部静脈血栓症は予後不良のことが多い。


【参考】