かぜ症候群(普通感冒)Common cold

かぜ症候群(普通感冒)Common cold


【概念】

 上気道、特に鼻・咽腔粘膜の急性炎症で、上気道の急性カタル症状を呈する。
 一般に軽症で予後良好、短期間で自然治癒する。

【病原体】

 80〜90%はウィルス感染による。
 ライノウィルスRhinovirusによることが最も多い(30〜50%)。
 次いでヒトコロナウィルス human coronavirus (HCoV)(成人発症の約15%)。
 ライノウィルスは100種以上の血清型が同定されており、同時に複数の型が流行することもある。増殖の至適温度は鼻腔内とほぼ同じ33〜35℃。春と秋に流行のピークがある。
 コロナウィルスは血清型によって3群に分類されており、かぜ症候群の病因になりうるのは HcoV-229E(Ⅰ群)と HCoV-OC43(Ⅱ群)。1)冬から春にかけて流行のピークがある。
 感染経路は主に飛沫感染。ウィルスは上気道粘膜に付着・増殖する。

【症状】

 潜伏期間は約2日。
 鼻汁、鼻閉、くしゃみ、咽頭痛が4徴候である。
 咽頭乾燥感、くしゃみで発症すし、鼻口咽頭粘膜の発赤腫脹がみられる。
 鼻汁ははじめ水様性、次第に粘液性、粘液膿性になる。
 咳は約30%にみられ、全身倦怠感や頭痛を認めることもある。
 ウィルス性の副鼻腔炎や中耳炎の合併がしばしばみられる。
 発熱・全身症状はあっても軽度。約1週間で治癒する。

【合併症】

・二次性細菌感染症:インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、ブランハメラなどが多い。慢性呼吸器疾患、心不全、糖尿病を基礎に有する患者や高齢者が肺炎のハイリスク。
・中耳炎:経耳管感染による。肺炎球菌やインフルエンザ菌が多い。
・副鼻腔炎:膿粘液性鼻漏、頬部痛、前頭痛などを呈する。ブドウ球菌が多い。
・まれに脳炎、横断性脊髄炎、ギラン・バレー症候群、心筋炎、心膜炎など。

【診断】

 鼻腔洗浄液や咽頭拭い液からのウィルス分離。
 PCR法によるウィルス遺伝子の検出。
  ペア血清による抗体検査。
 しかしこれらが日常臨床で利用されることはほとんどない。

【治療】

 対症療法のみ。手洗いの励行。
 二次感染のハイリスクグループには抗生剤を投与。


【註記】
1)SARSの原因となるSARS-CoVはこの3群とは異なる新型のコロナウィルス。


【参考】


【作成】2016-12-15