サイトメガロウィルス感染症 CMV infection
【概念】
ヒトサイトメガロウィルス human cytomegalovirus (HCMV)が健康な成人に疾患を引き起こすことはほとんどないが、妊娠初期の初感染で児におこる先天性巨細胞封入体症や、易感染性宿主におけるさまざまな臓器・組織障害が問題となる。
【病原体】
ヘルペスウィルス科のβウィルス亜科に属するサイトメガロウィルスはヘルペス科のなかで最大級のゲノムを持ち、増殖速度が比較的遅い。
世界中に広く分布し、50歳以降の90%以上の成人に感染している。家族間、小児間、または性交渉など、比較的濃密な接触によって伝播される。初感染後は主として抹消単核球やマクロファージ前駆細胞に潜伏し、感染性ウィルスを持続的に産生・排出する。
ウィルスはさまざまな上皮細胞で増殖し、感染細胞はしばしば肥大化し、フクロウの眼に似た特有の核内封入体 owl’s eyeを形成する。
【臨床症状】
1)先天性巨細胞封入体症
妊娠初期の初感染により垂直感染をおこし、うち5%が本症をおこす。
出血斑、肝脾腫、黄疸、小頭症、知能障害などが典型的。
多くは新生児期には無症状だが、成長とともに聴力、視力、歯牙異常、精神発達遅滞などが現れてくる。
2)サイトメガロウィルス単核症
EBウィルスによる伝染性単核症に似た異種血球凝集反応陰性の単核球増加症をおこす。末梢血リンパ球が相対的に増加し、10%を超える異型リンパ球の出現がみられる。
白血球の入った血液輸血、または性活動の活発な若年成人にみられる。
3)易感染性宿主のサイトメガロウィルス感染症
・間質性肺炎:骨髄移植後に多い。
・サイトメガロウィルス網膜炎:AIDS患者に多い。
・消化管感染症:下痢、下血、潰瘍、まれに穿孔をおこす。
【検査】
・ウィルス分離、免疫組織化学的検出、PCRによる遺伝子検出などが可能だが、単なる検出は急性感染の証明にはならない。
・末梢血中のサイトメガロウィルス抗原(pp65)陽性白血球を検出するアンチゲネミア法が迅速診断として有用。
【治療】
ガンシクロビル:強力な抗ウィルス作用を持つが、骨髄抑制などの副作用がある。
【註記】
【参考】
【作成】2016-12-16