コレラ cholera
【概念】
コレラ毒素を産生する血清型O1またはO139のコレラ菌が、腸管内で産生した毒素で起こる急性腸管感染症。
【病原体】
コレラ菌 Vibrio choleraeはビブリオ族のG陰性桿菌。
菌体表面のO抗原により多くの血清型に分類され、コレラの原因となるものは血清型O1またはO139に属し、かつコレラ毒素(エンテロトキシン)を産生する株である。
O1型は古典型(アジア型)とエルトール型の2つの生物型に分けられ、さらに抗原の違いにより小川、稲葉、彦島の3血清型に分けられる。
コレラ毒素を産生しないコレラ菌の感染はコレラと診断されない。
【疫学】
我が国においてはまれな疾患だが、現在でも中南米、アフリカ、アジア地域を中心に、年間10万人以上の患者発生がある。
感染経路は経口感染で、菌に汚染された海産魚介類が原因となることが多い。
感染症法で三類感染症。
【病態生理】
コレラ毒素はAとBのサブユニットから構成されている。
Bサブユニットで小腸粘膜細胞の受容体に結合し、Aサブユニットが細胞膜のアデニル酸サイクレースを活性化することで細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度が高くなる。それによりNaとClの吸収が抑制され、さらに腸管腔へのCl分泌が亢進する。そのため水分が腸管腔へ移動し下痢になる。
【臨床症状】
潜伏期間は1〜3日
水様下痢、嘔吐を主症状とする。
下痢は「米のとぎ汁様」といわれ、重篤な脱水症状をきたしやすい。
血便はなく、腹痛は軽度で、通常発熱は伴わない。
一般に予後は良好である。
一般検査で特異的な所見はない。
【診断】
便や吐物からの、コレラ毒素産生能のある、またはコレラ毒素遺伝子を保有する、血清型O1またはO139のコレラ菌を検出。
【治療】
・脱水対策が主。
・抗菌薬としては、フルオロキノロン系やテトラサイクリン系抗菌薬を3日間経口投与する。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-27