ブルセラ症 brucellosis

ブルセラ症 brucellosis


【概念】
 ブルセラ属の菌による人獣共通感染症であり、ヒトにおける疾患はマルタ熱、地中海熱、波状熱などと呼ばれ、地中海地方、中南米を中心に広く世界中に分布する。
 菌は種によって宿主とする動物が異なり、Brucella melitensisはヤギなどの小型反芻動物、B. abortusがウシ、B. suisがブタ、B. canisがイヌに主に感染し、ヒトに発症するものは大多数がB. melitensisである。
 菌はヤギやウシなど感染動物の尿、ミルク、胎盤から排出され、非殺菌の乳製品や加熱不十分の肉の摂取、尿や胎盤などの接触、汚染された塵やエアロゾルの吸入によって感染する。ヒトからヒトへの感染はない。

【病原菌】
 ブルセラ属はG陰性桿菌で、細胞内寄生性である。好中球やマクロファージに貪食されるが、細胞内殺菌を逃れることができ、リンパ行性あるいは血行性に全身臓器に散布されて持続感染を起こす。

【臨床症状】
 潜伏期間1〜3週間。
 症状は軽く感冒様症状にとどまるが、主な急性期症状は特徴的な発熱で、午後から夕方にかけて熱発し、ときに40℃以上になるが、著明な発汗により朝には平熱に戻る。
 症状は数週間持続し、1〜2週間症状が改善し、再び発熱を繰り返す(波状熱)。
 発熱以外では、全身の疼痛や倦怠感が強い。
 悪心・嘔吐、下痢症などの消化器症状、咽頭痛、乾性咳などの呼吸器症状、リンパ節腫脹や肝脾腫、関節腫脹、体重減少、うつ症状などがみられることもあり、ときに関節炎、心内膜炎、骨髄炎、尿路感染、脳炎、髄膜炎などを合併する。
 妊婦が感染すると流産および子宮内感染の可能性がある。
 治療後の再発率はおよそ5〜15%。
 慢性ブルセラ症は脊椎炎、骨髄炎、膿瘍やぶどう膜炎などが年余に渡り持続する。

【検査・診断】
 末梢白血球数は正常ないし減少、リンパ球数はやや増加傾向を示す。
 非特異的な血小板減少や肝機能異常がみられることもある。
 診断は血液培養、または骨髄穿刺やリンパ節生検標本からの培養による本菌の証明。
 血清抗体価測定や特異的PCRも有用。

【治療】
 ドキシサイクリンおよびアミノグリコシドの併用を2〜3週間行う。
 ワクチンは家畜にのみ用いられている。


【註記】


【参考】


【作成】2017-07-03