Branch atheromatous disease (BAD)

Branch atheromatous disease (BAD)


【概念】
 脳主幹動脈から分岐する穿通枝の入口部がアテローム性病変により狭窄・閉塞することにより発症する脳深部の小梗塞のいち病態(Caplan 1989)。ラクナ梗塞に比べてより大径(15mm以上)の穿通枝領域の脳梗塞の発症機序を説明する概念である。
 BADはアジア人に多く、急性期に進行性運動麻痺を呈しやすい。

【診断】
 BADの診断は穿通枝入口部が閉塞した際の特徴的な梗塞分布から暫定的に行われる。
 BADを起こす可能性のある穿通枝にはいくつがあるが、外側レンズ核線条体動脈 lateral lenticulostriate artery (LSA)および橋傍正中枝動脈 paramedian pontine artery (PPA)は梗塞分布から穿通枝入口部閉塞の推定が可能である。

〈J-BAD registryでの定義〉
・LSA領域のBAD:基底核から放線冠にかけて3スライス以上(20mm以上)。
・PPA領域のBAD:橋底部腹側に接して橋背側に延びる梗塞巣。
・かつ主幹動脈に50%以上の狭窄・閉塞がなく、心房細動を伴わないこと。

 ただしこのようなBADの梗塞分布による診断基準は研究者たちのコンセンサスを得られているわけではなく、梗塞分布から定義されるBAD(BAD型脳梗塞)はCaplanが提唱した病理学的なBADとは完全に一致せず、梗塞層が穿通枝領域全域に拡大した脳梗塞のみを抽出しているだけともいえる。

【臨床症状】
 全脳梗塞全体の約10%がBAD型脳梗塞とされており、日本人を含めた東アジア人に多い。
 ラクナ梗塞と比較すると、脳梗塞急性期の治療にも関わらず、進行性運動麻痺を呈する頻度が高く、機能予後が悪い。それには急性期の梗塞巣の拡大が関与するが、その正確な機序はまだ不明である。
 病態的にはラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞の中間的背景をもつと考えられている。


【参考】
・尾原知行「Branch atheromatous disease」:日本医師会雑誌 第146巻・特別号(1) 2017