菌血症 bacteremia / 敗血症 sepsis

菌血症 bacteremia / 敗血症 sepsis


【概念】
 菌血症とは、循環血流中に最近が存在する状態をいう。 細菌以外の病原体が血中に存在する場合、真菌血症 fungemia、ウイルス血症 viremiaなどと呼ばれる。
・一過性菌血症:短期間で血中の菌が排除されるもの。
・間欠的菌血症:複数回菌血症を認めるもの。
・持続性菌血症:菌血症の状態が継続するもの。

 血液中に侵入した菌は、通常肝臓や脾臓などの網内系で捕食され、殺菌、処理されるが、それを逃れた菌は他の臓器に侵入して増殖し、新たな感染巣をつくる可能性がある。
 G陰性菌による感染症では、菌体成分であるリポポリサッカライド(LPS)が血中に存在するエンドトキシン血症 endotoxemiaを起こし、エンドトキシンショックを誘発する。

【敗血症の定義】
・感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害(2016)。
・quick Sequential Organ Failure Assessment (SOFA)
 ① 呼吸回数22回/分以上
 ② 精神状態の変化
 ③ 収縮期血圧100mmHg未満
 の3項目中2項目以上を満たし、かつ感染症が疑われるものを敗血症と診断する。
・敗血症性ショック septic shock
 適切な輸液負荷にもかかわらず、平均血圧65mmHg以上を維持するために循環作動薬が必要で、かつ血清乳酸値が2mmol/L (18mg/dL)をこえるもの(2016)。

【病因】
 患者背景として感染抵抗性の低下があることが多い。
 悪性腫瘍、糖尿病、広範囲熱傷、先天性または後天性の免疫不全など。
 医原性として抗癌剤、副腎皮質ステロイド、外科手術、血管留置カテーテルなど。
 感染抵抗性が低下した患者の場合、起炎菌は弱毒病原体のことが多い。
 高病原性の病原体による感染では、感染防御力が正常の宿主でも発症しうる。

【臨床症状】
〈菌血症〉
 一過性菌血症では発熱は一般に軽度。
 間欠的菌血症では発熱、悪寒、戦慄などがさまざまな程度でみられる。
 持続性菌血症では発熱、倦怠感が長期間持続し、有痛性のOsler結節や無痛性のJaneway斑を手指や四肢に認めることがある。
 診断は血液培養などにより血液中に菌の存在が証明されれば確定となる。
〈敗血症〉
 全身の炎症に伴い、発熱、悪寒、戦慄、頻脈、頻呼吸、倦怠感などがみられる。
 進行すると呼吸困難、血圧低下(ショック)、乏尿、意識障害などが出現する。

【臨床検査】
・敗血症では白血球増加(または減少)、CRP高値となる。
・重症細菌感染ではプロカルシトニン、プレセプシンが上昇する。
・G陰性菌による敗血症では血中エンドトキシンが陽性になることがある。

【治療】
・原因菌に有効な抗菌薬を選択し、基本的に点滴静注による十分量の投与を行う。
・免疫グロブリンを併用することもある。
・敗血症に対しては、ショックの治療を行う。
・敗血症患者に対するステロイドの大量投与は、ショックからの早期離脱効果はあるが、予後改善効果は否定的と考えられている。