房室ブロック atrioventricular block

房室ブロック atrioventricular block


【概念】
 心房から心室への興奮伝導が遅延または途絶した病態。
 房室伝導系(房室接合部、His束、脚、プルキンエ繊維)の器質的障害や、副交感神経活動の過剰による機能的障害で起こり、症状は心室拍数に依存する。
 重症では心不全や脳虚血症状(Adams-Stokes発作)が出現し、徐脈によるQT時間の延長から torsades de pointes (TdP:QT延長を伴う多形性心室頻拍)が発生することもある。

【分類】
・第1度:PQ時間が0.21秒以上に延長しているが、1:1の房室伝導は保たれているもの。
・第2度:心房から心室への伝導が時どき途絶するもの。P波に続くQRSが間欠的に脱落する。
  Wenckebach型:PR間隔が徐々に延長した後にQRS波が脱落するタイプ。
  Mobitz Ⅱ型:PR時間が一定のままで突然QRS波が脱落するタイプ。
・第3度:心房から心室への興奮の伝導が完全に途絶し、P波とQRS波は互いに独立した周期で出現する。心室興奮は接合部またはプルキンエ繊維から発生する補充調律。TdPが発生しやすい。

・2:1ブロック:房室伝導比が2:1のもの
・高度房室ブロック:伝導比が2:1ブロックよりも不良のもの
・発作性房室ブロック:発作性に高度あるいは完全房室ブロックを呈し、Adams-Stokes発作をきたすもの

〈His束心電図による分類〉
 ① 房室結節内ブロック(A-Hブロック)
 ② His束内ブロック(H-H’ブロック)
 ③ His束下ブロック(H-Vブロック)
・H-H’ブロックおよびH-Vブロックはペースメーカー植え込みの適応となる。
・Wenckebach型第2度房室ブロックは房室結節内の伝導障害によることが多く、QRS幅が正常であれば90%がA-Hブロックである。
・Mobitz Ⅱ型第2度房室ブロックはHis束以下の伝導障害(H-H’ブロック、H-Vブロック)である。
・補充収縮のQRS幅が細い場合、その起源はHis束あるいは房室結節である。
・補充収縮のQRS幅が広い場合、その起源はHis束よりも下位の刺激伝導系である。
・2度以上の房室ブロックを呈する症例で、元来のQRS幅が広い場合、その多くはH-Vブロックであり、脚を含めた房室伝導系の広範囲の障害が示唆される。

【臨床症状】
・脳虚血症状:めまい、失神など。TdPによることが多い。
・心不全症状:全身倦怠感、息切れなど。第3度房室ブロックによることが多い。
・第3度房室ブロックにおいては、頸動脈(左室収縮に対応)と頚静脈(右房収縮に対応)が別々に拍動し、cannon波を認めることがあり、またⅠ音の強さが一定でないことも特徴。

【治療】
・徐脈による症状を呈する場合、ペースメーカー植え込み術の適応となる。
・慢性例にはアトロピン、硫酸オルシプレナリンの経口投与も行われるが、効果はPMに劣る。


【註記】


【参考】


【作成】2017-06-02