無症候性脳梗塞 asymptomatic infarction

無症候性脳梗塞 asymptomatic infarction


【概念】
 過去に自覚症状がない症例に認められる器質的脳血管障害で、その頻度は高齢者の10〜30%とされる。その多くは脳深部のラクナ梗塞である。

【定義】
 画像上脳梗塞と考えられる変化があること、かつ
 ①その病巣に該当する神経徴候(深部腱反射の左右差、脳血管性と思われる認知症など)がない。
 ②病巣に該当する自覚症状(TIAも含む)を、過去にも現在にも、本人ないし家族が気づいていない。

【リスク】
・無症候性脳梗塞は脳卒中発症の高リスクとなる。
・無症候性脳梗塞は認知機能障害発症の高リスクとなる。

【危険因子】
・最大の危険因子は高血圧である。
・その他の危険因:2型糖尿病、高コレステロール血症、軽動脈硬化の重症度、非弁膜症性心房細動、メタボリックシンドローム、睡眠時無呼吸、慢性腎臓病、飲酒と喫煙など

【治療】
・抗血小板療法は科学的エビデンスがないため推奨されない。
・最大の危険因子である高血圧の治療と血圧管理が最優先され、併せてその他の危険因子管理や生活習慣の是正を行う。

〈大脳白質病変〉
 大脳白質病変は、主に虚血性変化であって厳密には脳梗塞ではないが、近年脳小血管病として扱われる。脳卒中発症および認知機能障害発症の高リスク群である。

【MRI所見】
・T1強調画像:等信号あるいは大脳灰白質と同程度の軽度低信号。
・T2強調画像・プロトン密度強調画像:脳室周囲白質や深部・皮質下白質に淡い高信号病変。
・FLAIR画像:明瞭な高信号。

【分類】
・脳室周囲病変 periventricular hyperintensity (PVH)
・深部皮質下白質病変 deep and subcortical white matter hyperintensity (DSWMH)

【危険因子】
 最大の危険因子は高血圧である。
 その他:糖尿病、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病、血中総ホモシステイン高値、喫煙

【治療】
・高血圧の治療と血圧管理が積極的に推奨される。
・その他の危険因子の管理や生活習慣の是正も考慮する。
・スタチンが大脳白質病変の進行を抑制する可能性がある。


【参考】
・高橋務、松本昌泰「無症候性脳梗塞」:日本医師会雑誌 第146巻・特別号(1) 2017