アレナウイルス Arenavirus
アレナウイルス科 Arenaviridaeはアレナウイルス属 Arenavirusのみからなり、さらに旧世界アレナウイルス群(ラッサウイルス、LCMウイルス)と新世界アレナウイルス群(南米出血熱ウイルス、ホワイトウォーターアロヨウイルス)に分類される。
アレナウイルスの自然宿主は固有の種の齧歯類で、旧世界アレナウイルスと新世界アレナウイルスはそれぞれ固有の宿主の進化とともに進化していると考えられる。
Ⅰ 形態と遺伝子構造
・2分節のマイナス鎖1本鎖RNA(S-RNAとL-RNA)をゲノムとする。
・エンベロープを持つ。
・直径50〜300nmで球形〜多形性。
・S-RNAはヌクレオカプシドプロテインNPと膜タンパク質GPC(前駆体)を、L-RNAはRNA依存性RNAポリメラーゼ(Lタンパク質)とマトリックスタンパク質として機能するZタンパク質をコードする。
・両ゲノムの両末端は互いに相補的であるために環状構造(パンハンドル構造 panhandle structure)をとると考えられる。
・ウイルス粒子に感染細胞由来のリボソームを取り込み、電顕上電子密度の高い砂状粒子の形態を呈する。
Ⅱ ヒト病原性アレナウイルス
【旧世界アレナウイルス群 Old World complex】
1. ラッサウイルス Lassa virus
西アフリカにのみ分布し、比較的致命率の高いウイルス性出血熱の原因となる。
・宿主:Mastomys matalennsis
・分布:西アフリカ
・疾患:ラッサ熱
2. リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルス Lymphocytic choriomeningitis virus
世界中に分布し、ヒトでは出血熱様症状は引き起こさない。
・宿主:Mus domesticus, Mus musculus
・分布:アメリカ大陸、ユーラシア大陸
・疾患:無菌性髄膜炎、発熱性疾患、先天性LCMウイルス感染症
3. ルジョウイルス Lujo virus
2008年にザンビアで発生した出血熱患者から分離された。
・宿主:不明
・分布:ザンビア
・疾患:ウイルス性出血熱
【新世界アレナウイルス群 New World complex】
4. フニンウイルス Junin virus
南米出血熱ウイルスの一種。
・宿主:Calomys musculinus
・分布:アルゼンチン
・疾患:アルゼンチン出血熱
5. マチュボウイルス Machupo virus
南米出血熱ウイルスの一種。
・宿主:Calomys callosus
・分布:ボリビア
・疾患:ボリビア出血熱
6. チャパレウイルス Chapare virus
南米出血熱ウイルスの一種。
・宿主:不明
・分布:ボリビア
・疾患:ウイスル性出血熱
7. ガナリトウイルス Guanarito virus
南米出血熱ウイルスの一種。
・宿主:Sigmodon alstoni, Zygodontomys brevicauda
・分布:ベネズエラ
・疾患:ベネズエラ出血熱
8. サビアウイルス Sabia virus
南米出血熱ウイルスの一種。
・宿主:不明
・分布:ブラジル
・疾患:ブラジル出血熱
9. ホワイトウォーターアロヨウイルス Whitewater Arroyyo virus
北米で出血熱様症状を引き起こし、ARDSと肝不全を呈する。
・宿主:Neotoma albigula
・分布:ニューメキシコ、カリフォルニア
・疾患:名称未定
【註記】
【参考】
【作成】2017-01-15