アレルギー性鼻炎 allergic rhinitis
【概念】
アレルギー性鼻炎とは、鼻粘膜のⅠ型アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉を3主徴とする疾患である。
大多数で原因抗原の同定が可能であり、抗原は吸入性のものが経口性のものに比べて圧倒的に多い。
好発時期により、通年性 perennialと季節性 seasonal(花粉症 pollinosis)とに分類される。
発症の遺伝因子として、HLA型特異性からブタクサ花粉症とHLA-DR2/DW2、DR5、スギ花粉症とHLA-DQW3の関連が指摘されている。
環境因子では、原因抗原として通年性ではダニ、季節性ではスギが圧倒的に多い。
わが国においてはスギ花粉症の占める割合が高いことが特徴的で、国民の16%以上が罹患しているとされ、一般に若い成人に発症が多いが、小児の発症も増加している。
【病態】
Th2細胞およびTh2サイトカインが優位な環境下で、スギ花粉の暴露・侵入によりスギ花粉特異的Th2細胞が誘導され、鼻粘膜局所あるいは頸部リンパ節において、抗原特異的Th2細胞のサポート下にスギ花粉特異的IgE抗体が産生されて発症する。
IgE抗体はマスト細胞表面の高親和性Fcε受容体と結合する。感作されたマスト細胞はスギ花粉抗原と反応してヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどを放出する。
ヒスタミンは鼻粘膜知覚神経(三叉神経)終末のヒスタミン受容体(HIR)を刺激し、サブスタンスP(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)陽性線維を介し、順行性に延髄のくしゃみ中枢に伝えられ、迷走神経を介してくしゃみが引き起こされる。
くしゃみ中枢からの刺激は副交感神経からなる反射遠心路に伝えられ、鼻腺を刺激して鼻漏が生じる。マスト細胞から放出されたペプチドロイコトリエン(pLTs)などは直接鼻粘膜の血管に作用し、血管拡張、透過性亢進から容積血管のうっ血、浮腫により鼻閉を起こす。
鼻粘膜には好酸球を始め、好塩基球、T細胞などが浸潤する。誘発試験では、即時相で鼻汁中に一過性の好酸球浸潤がみられるが、遅発相(7〜8時間)でも再び好酸球、T細胞の増加がみられ、この時期に一致して鼻閉が出現する。
【臨床症状】
くしゃみ発作、水様性鼻漏、鼻閉を3主徴とする。
大量の抗原に暴露すると、眼症状、口腔症状、咽頭症状、皮膚症状、発熱、頭痛などもみられることがある。
【臨床検査】
・鼻鏡検査:蒼白に浮腫状に腫脹した鼻粘膜と水様性分泌液が観察される。
・鼻汁好酸球検査:鼻汁中に好酸球が増加する。
・皮膚テストまたは血清特異IgE抗体定量で陽性
・誘発テスト陽性
【診断】
・臨床症状および鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または血清特異IgE抗体検査)、誘発テストのうち2つ以上陽性なら確定診断となる。
・アレルギー検査が1つのみ陽性であっても、中等度以上陽性で典型的症状を有するものはアレルギー性鼻炎と診断できる。
・血管運動性鼻炎では鼻汁好酸球陰性、皮膚テスト・血清IgE抗体陰性であり、好酸球過多性鼻炎では鼻汁中に好酸球が出現するが、皮膚テスト・血清IgE抗体は陰性である。
【合併症】
1) アレルギー性結膜炎
スギ花粉症ではほぼ必発で、掻痒感、流涙、異物感、眼痛などが起こる。
2) 口腔症状
口腔乾燥、味覚障害が多い。
口腔アレルギー症候群 oral allergy syndrome(特定の食物を食べると口腔粘膜や口唇に掻痒感や浮腫状腫脹が起こる)も花粉症との関連が深く、シラカバ花粉症ではリンゴやサクランボなどバラ科の果実、イネ科花粉症ではトマト、メロン、ミカン、ヨモギ花粉症ではメロン、バナナ、セロリが原因となることが多い。
3) 咽・喉頭症状
異常感、掻痒感、咳の頻度が高い。
4) 気管・気管支症状
気管支喘息の合併が高率にみられる。
5) 胃腸症状
腹痛、悪心など多彩な症状がおこることがある。
6) 皮膚症状
アトピー性皮膚炎の増悪因子となる。
7) 全身症状
頭重感、倦怠感、うつ状態もみられる。
【治療】
・抗原の回避が第1となる。
・減感作療法(抗原特異的免疫療法)は根治療法となりうる。
・ヒスタミン受容体拮抗薬はくしゃみや鼻漏に効果が高い。
・ロイコトリエン受容体拮抗薬、トロンボキサン・プロスタグランジン受容体拮抗薬は鼻閉に効果が高く、抗炎症作用もある。
・化学伝達物質遊離抑制薬は副作用が少ないが、効果は弱い。
・局所ステロイド薬は効果が強く、その発現が早く、全身的な副作用が少ない。
・漢方薬が有効な例もある。
【註記】
【参考】
【作成】2017-02-25