非びらん性胃食道逆流症 non-erosive reflex disease : NERD
【定義】
胃食道逆流症(GERD)ほ、胃食道逆流により引き起こされる食道粘膜障害と煩わしい症状のいずれか、または両者を引き起こす疾患であり、食道粘膜障害(びらん、潰瘍など)を有する「びらん性GERD」と、逆流症状のみを認める「非びらん性GERD(NERD)」に分類される。
GERDの有病率は推定約10〜20%で、そのうち約60%はNERDである。
【疾患概念】
RomeⅣにおいては、病的な酸逆流がないが症状と逆流との有意な相関が見られるものを「逆流性過敏症 reflex hypersensitivity」、病的な酸逆流もなく症状と逆流との相関が全く認められないものを「機能性胸やけ functional heartburn」と分類される。
【診断基準】RomeⅣ
<逆流性過敏症 reflex hypersensitivity>
① 胸やけや胸痛を含む胸骨後方症状がある。
② 正常内視鏡像と症状の原因となる好酸球性食道炎を認めない。
③ 食道pHモニタリングまたは食道インピーダンスpHモニタリングにより、食道酸暴露時間が正常にもかかわらず、逆流により症状が惹起される。
上記4項目を最近3ヶ月間は満たしており、診断の6ヶ月前に症状が少なくとも週に2回以上出現しているもの。
<機能性胸やけ functional heartburn>
① 胸骨後方の焼けるような不快感または痛みがある。
② 適切な酸分泌抑制治療にもかかわらず症状が改善しない。
③ 症状の原因となる胃食道逆流(病的な酸逆流や症状との関連)や好酸球性食道炎を認めない。
④ 主な食道運動障害を認めない。
上記4項目を最近3ヶ月間は満たしており、診断の6ヶ月前に症状が少なくとも週に2回以上出現しているもの。
【病態】
嚥下に伴わない下部食道括約筋の弛緩現象である一過性下部食道括約筋弛緩 transient lower esophageal sphincter relaxation : TLESRである。
酸が逆流することにより食道バリア機構が破綻し、食道知覚神経を直接刺激して症状を惹起させる(しみこみ説)。
酸暴露による上皮や間質の炎症細胞から放出されるサイトカインや各種メディエーターにより症状が惹起される。
【診断】
胸やけは「胸骨後方の焼けるような灼熱感」である。
高脂肪食摂取、過食、前屈位など、逆流を惹起させる誘引を伴っていれば確実にNERDであることが多い。
1)上部消化管内視鏡検査
改訂ロサンゼルス分類により、Grade A(5mm以下の粘膜障害)以上がびらん性GERDであり、NERDではGrade M(粘膜障害は認めないが、色調変化は認めるもの)を呈することが多い。好酸球性食道炎との鑑別には生検が必要。
2)診断的治療
PPI投与によって、胸やけ症状の消失の有無を見る。PPI標準量を1週間投与する。
3)食道インピーダンスpHモニタリング
経鼻的にカテーテルを挿入して食道に留置し、24時間連続計測する。pHセンサーをLES口側5cmに固定し、胃内のpHも同時に測定する。
【治療】
1)初期治療
PPIが初期治療において第一選択となる。
生活習慣の改善(過食や高脂肪食を控える、ダイエット、就寝前3時間の飲食を避けるなど)。
症状が強いときは制酸剤やアルギン酸Na(アルロイドG)の頓用が有効。
カリウム競合型アシッドブロッカー potassium competitive acid blocker : P-CAB(ボノプラザン:タケキャブ)はPPIよりも強力な酸分泌抑制作用を有する。
2)維持療法
PPIに反応するNERDでは、PPIオンデマンド療法または維持療法が推奨される。
3)PPI抵抗性
食道知覚過敏が主因と考えられる。
三環系抗うつ剤やセロトニン再取り込み阻害剤(SSRIやSNRI)が用いられる。消化管運動賦活剤や漢方(六君子湯など)も使われることがあるが、いずれも十分な効果を示すエビデンスはない。
腹腔鏡下噴門形成術が行われることもある。
【参考】
・「非びらん性胃食道逆流症」:藤原靖弘:日医雑誌 Vol.147 No.10 2019