過敏性肺炎 hypersensitivity pneumonitis : HP
【概念】
過敏性肺炎は、特異抗原あるいは感作リンパ球が反応するⅢ型・Ⅳ型アレルギー反応を基本とした肉芽腫性間質性肺炎。慢性化とともに細気管支・小葉中心領域に線維化をきたして進行性線維化間質性肺炎が明らかとなり、線維化を伴うと予後が悪化する。
抗原を吸入すると、肺局所で抗原と特異抗体(Ⅲ型アレルギー)または感作リンパ球(Ⅳ型アレルギー)が反応して病巣が形成される。
抗原には真菌、細菌、動物由来(鳥類など)蛋白、化学物質などがある。
急性HPはTh1とTh17反応が主体。
慢性HPは免疫反応がTh2にシフトして線維化の原因となる。
・夏型過敏性肺炎:日本特有の疾患。高温多湿の気候を背景に木造家屋で増殖する真菌(トリコスポリン)が原因となる。
・鳥関連過敏性肺炎:鳥糞や羽毛に含まれる抗原が原因で、鳥飼育者に発症する鳥飼病や、羽毛製品による過敏性肺炎が含まれる。
・農夫肺:牧場に増殖する好熱性放線菌が原因。
・加湿器肺:加湿器の水槽で増殖する真菌・細菌が原因。
・キノコ栽培者肺:キノコ胞子や栽培環境で増殖する真菌・細菌が原因。
日本では急性HPは夏型過敏性肺炎、慢性HPでは鳥関連過敏性肺炎が多い。
慢性で線維化を伴う症例は進行性で、5年生存率は50〜70%と予後不良。
【疾患を疑うポイント】
・症状や検査所見が環境を変えることにより改善または悪化する場合。
・症状や検査所見が季節により改善または悪化する場合。
・他の間質性肺炎では説明がつかないような進行を示す場合。
・改善しない肺炎像を呈する場合。
【臨床像】
・急性HPは症状と抗原暴露の関連が明らかなことが多い。
・慢性HPは急性症状を認めることは稀で、数ヶ月から数年の経過で徐々に進行する労作時呼吸困難、全身倦怠感、食欲不振、咳嗽および体重減少を呈する。
・胸部聴診で小水泡ラ音(fine crackles)が90%、ばち指が30%にみられる
吸気時 squawkは細気管支病変の存在を示唆し、本症に特徴的。
【検査所見】
・免疫学的所見
夏型HPでは抗トリコスポロン・アサヒ抗体測定
鳥関連HPでは鳥特異的IgG測定
・胸部HRCT所見
非線維性:小葉中心性の粒状影、辺縁の不明瞭な小結節、モザイク分布の汎小葉性のスリガラス像。
線維性:牽引性細気管支の拡張、three density pattern(特異的な3つの異なる吸収域:スリガラス陰影・濃度低下および血管が減少した小葉・正常肺の組み合わせたHRCTパターン)がみられ、細気管支病変を示唆する。
・BAL所見
リンパ球分画が40%以上の所見が重要。
・病理所見
急性HPでは非乾酪性肉芽腫が特徴的(慢性ではあまり認められない)。
細気管支の病変や気道中心性の線維化が重要所見。
小葉中心性の線維化と胸膜直下の線維化へつながる架橋線維化 bridging finrosis が特徴的。
【治療】
・急性HPは抗原回避を基本とする。
呼吸不全例では短期間ステロイドを使用する。
・慢性HPは的確な抗原回避を行えば改善・進行抑制できる。
進行する場合はステロイド・免疫抑制薬使用。
線維性過敏性肺炎では抗線維化薬(nintedanib)の追加を考慮。
・「過敏性肺炎診療指針2022」日本呼吸器学会