血管炎性ニューロパチー
【基本】
血管炎性ニューロパチーは末梢神経の終動脈 terminal artery のサイズである小動脈〜細動脈を主に障害する血管炎が多発することにより起こる。
多発性単神経炎(multiple mononeuropathy)の病型を示し、主要神経幹が障害され、左右非対称の分布を取る。
代表的疾患はANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎に含まれる以下の3疾患である。
・顕微鏡的多発血管炎 microscopic polyangiitis : MPA
・多発血管炎性肉芽腫症 granulomatosis with polyangiitis : GPA
・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 eosinophilic granulomatosis with polyangiitis : EGPA
なかでもEGPAは末梢神経障害をきたす確率が非常に高く、次いでMPAが高率であり、GPAではあまりみられない。
なお、古典的結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa : PAN)は現在MPAを含まず、中型血管炎のカテゴリーに属しているが、一定の割合で小動脈〜細動脈の閉塞をきたし、多発性単神経炎を発症する。
【症候】
・左右差を有する
・四肢遠位部に障害のアクセントがある
・感覚>運動型
・亜急性進行性の多発単神経炎
症状は左右同時、左右対称に起こることはなく、神経幹の支配領域の感覚障害・運動障害を呈する。
近位筋が優位に障害されることはない。血管閉塞は四肢近位部・遠位部を問わずランダムに起こるので、近位部の神経幹も遠位部と同等に梗塞のチャンスがあるが、長い軸索ほど梗塞をきたす確率が高いために四肢遠位部に障害のアクセントがくる。
一般に感覚障害が運動障害に先行する。純粋に運動障害のみをきたすことはなく、罹患神経の支配領域に沿った強い痛みを伴うことが特徴となる。
症状は数日〜数週の単位で亜急性に進行し、無治療では運動麻痺や感覚障害が回復することはない。発熱、体重減少等の全身症候と炎症反応を伴う事が多い。EGPAでは喘息の悪化や著明な好酸球増多が多発性単神経炎の増悪と並行して起こる。
皮膚病変としては、小血管の血管炎では、紫斑、丘疹、水疱ならびに浅い潰瘍の他に蕁麻疹様紅斑が、中型血管の血管炎では網状のリベド、皮下結節、硬結を伴う径1cm前後の紅斑がみられ、いずれも下腿・足を中心に出現する。
【診断】
血管炎の病理学的診断には腓腹神経生検が最も有用。短腓骨筋生検を併用するとより検出率が高くなる。
小動脈周囲のリンパ球浸潤、神経上膜の好酸球浸潤などがみられる。
電気生理学的検査や針筋電図も有用。
脳脊髄液検査は正常。
血液検査でANCA(MPO-ANCA、PR3-ANCA)陽性はANCA関連血管炎の診断を積極的に支持する。ただし、ANCA陰性で炎症が末梢神経に限局する非全身性血管炎性ニューロパチー(non-systemic vasculitic neuropathy : NSVN)と呼ばれる病型もある。
EGPAでは好酸球増多やIgE高値がみられる。
【治療】
治療は可能な限り速やかに開始することが望ましい。
原則としてプレドニゾロン換算で体重kgあたり1mg/日を連日X1ヶ月維持し、その後減量して6ヶ月間継続する。
先行してステロイドパルス療法を3日間行うこともある。
ただしGPAはステロイド単剤ではコントロール困難なので、シクロフォスファミドパルス療法の併用が推奨される。
【多発性単神経炎をきたす血管炎】
<大型血管炎 large vessel vasculitis>
・巨細胞性動脈炎 giant cell arteritis
<中型血管炎 medium vessel vasculitis>
・結節性多発動脈炎 polyarteritis nodosa
<小型血管炎 small vessel vasculitis>
・好中球細胞質抗体関連血管炎 antineutrophil cytoplasmic antibody (ANCA)-associated vasculitis
・顕微鏡的多発血管炎 microscopic polyangitis
・多発血管炎性肉芽腫症 granulomatosis with polyangitis
・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 eosinophilic granulomatosis with polyangitis
・免疫複合体性小型血管炎 immune complex small vessel vasculitis
・クリオグロブリン血症性血管炎 cryoglobulinemic vasculitis
・IgA血管炎 IgA vasculitis
<多彩な血管を侵す血管炎 variable vessel vasculitis>
・ベーチェット病 Behcet’s disease
<全身疾患に関連する血管炎 vasculitis associated with systemic disease>
・ループス血管炎 lupus vasculitis
・リウマトイド血管炎 rheumatoid vasculitis
・サルコイド血管炎 sarcoid vasculitis
<病因が判明している血管炎 vasculitis associated with probable etiology>
・C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症性血管炎 hepatitis C virus-associated cryoglobulinemic vasculitis
・B型肝炎ウイルス関連血管炎 hepatitis B virus-associated vasculitis
・梅毒関連大動脈炎 syphilis-associated vasculitis
・薬剤関連ANCA関連血管炎 drug-associated ANCA-associated vasculitis
・癌関連血管炎 cancer-associated vasculitis
【参考】
・血管炎に伴うニューロパチー:神田隆:日本内科学雑誌 Vol. 108 No. 8 2019