膠原病に合併した間質性肺疾患
connective tissue disease-associated interstitial lung disease :
CTD-ILD
【合併頻度】
・強皮症(systemic sclerosis : SSc)が最も頻度が高い(70〜80%)。
・次いで多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis / dermatomyositis : PM/DM)が20〜30%。
・関節リウマチ(rheumatoid arthritis : RA)は10%程度。
・全身性エリテマトーデス(SLE)では比較的合併頻度が高い。
・肺病変先行型(膠原病に先行して肺病変が発症する)は PM/DMに多く、PM/DM-ILDの17〜19%を占める。
【病理組織パターン】
・diffuse alveolar damage (DAD)
・usual interstitial pneumonia (UIP)
・nonspecific interstitial pneumonia (NSIP)
・organizing pneumonia (OP)
・lymphocytic interstitial pneumonia (LIP)
・CTD-LID全体ではNSIPパターンが多い。
・DADパターンは予後不良。
・RAではUIPパターンがNSIPパターンより予後不良。
・それ以外のCTD-ILD全体ではUIPとNSIPに予後の差はない。
・一般にUIPパターンやNSIPパターンは慢性経過を呈する。
・DADパターンやOPパターンは急性から亜急性の経過を呈する。
【臨床症状】
・初期は無症状。進行すると乾性咳嗽、労作時呼吸困難など。
・聴診上、fine crackles を聴取する。慢性型ではばち指を呈する。
・筋症状に乏しい皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis : CADM)では急速に進行する呼吸器症状で発症することが多い。
・SLEでは lupus pneumonia と呼ばれる急性型の間質性肺炎を合併する。
【検査所見】
1)血清バイオマーカー
・間質性肺炎のバイオマーカーであるKL-6、SP-D、SP-Aが上昇することが多い。
・血清フェリチン値はCADMに合併した急速進行性ILDでしばしば著増する。
2)自己抗体
・SSc-ILDでは抗トポイソメラーゼⅠ(Scl-70)が検出される。
特にびまん皮膚硬化型SScに合併するILDにおいて高頻度。
・PM/DMでは筋炎特異的自己抗体が検出される。
抗アミノアシル tRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase : ARS)抗体
抗MDA5(melanoma differentiation-associated gene 5)抗体
・抗ARS抗体はILDに加え、多関節炎、機械工の手(mechanic’s hand)を呈するPM/DMで陽性になることが多い。
抗MDA5抗体はCADMに合併した急速進行性ILDで高頻度に陽性となる。
3)高分解能CT(high resolution CT : HRCT)
・UIPパターンでは網状影などに加え牽引性気管支拡張や蜂巣肺を呈する。
・NSIPパターンでは胸膜下の病変が比較的軽度(subpleural sparing)で、網状影や牽引性気管支拡張を認める。
・OPパターンでは斑状の濃厚影がみられる。
・PM/DMでは、気管支血管像に沿ったすりガラス影や浸潤影(NSIPパターンとOPパターンの混在:NSIP+OPパターン)を呈することが多い。
4)肺機能検査
・拘束性換気障害、肺拡散能低下。
5)気管支鏡検査
・気管支肺胞洗浄液検査(bronchoalveolar lavage : BAL)は主に感染症などの除外診断に用いる。
・経気管支的肺生検(transbronchial lung biopsy : TBLB)は感染症や悪性疾患の除外診断に用いる。
・クライオ肺生検(transbronchial lung cryobiopsy : TBLC)の有用性は未定。
6)外科的肺生検
・CTD-ILDの組織パターンの確定診断には胸腔鏡下肺生検(video-associated thoracic surgery : VATS)などの外科的肺生検が必要。
ただし、CTD-ILDでは組織パターンが必ずしも治療反応性や予後と関連しないために積極的には施行されない。
【治療と予後】
1)強皮症(SSc)
・SSc-ILDの中で経時的に進行する患者(約3割)が治療適応。
・Cyclophosphamide (CYC)、mycophenolate mofetil (MMF)が有効。
・抗線維化薬の nintedanib 、自己末梢血幹細胞移植も効果がある。
・抗IL-6受容体抗体(tocilizumab)、抗CD20抗体(rituximab)も有効。
2)関節リウマチ(RA )
・呼吸器症状を伴う進行性のRA-ILDが治療適応(20〜30%)。
・経験的にステロイド治療が行われ、免疫抑制剤が併用されることもある。
・抗線維化薬の nintedanib 、CTLA4融合蛋白(abatacept)も有効。
・UIPパターンのRA-ILDは予後不良。
3)多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)
・急性型PM/DMに合併した間質性肺炎(PM/DM-ILD)では、ステロイドパルス療法に加え、初期より免疫抑制剤が併用される。
・抗MDA5抗体陽性または血清フェリチン高値の急速進行性の間質性肺疾患患者に対しては、初期よりステロイドパルス療法に加え、2種類の免疫抑制剤(カルシュニューリン阻害剤+CYC)を投与する triple therapy が推奨される。
・polymyxin B-imobilized fiber column (PMX)を用いたエンドトキシン吸着療法(high-dose intravenous immunoglobulin : IVIG)、抗CD20抗体(rituximab)なども試みられている。JAK阻害薬や血漿交換療法も有効。
・慢性型PM/DM-ILDではステロイド薬が第一選択。
抗ARS抗体陽性患者はステロイド薬に対する初期の反応は良好だが、減量中にしばしば再燃するため、はじめから免疫抑制剤を併用することが多い。
シクロフォスファミド間欠大量静注療法(intravenous cyclophosphamide : IVCY)も用いられる。
・予後:基礎疾患別にはPMが最も良好。次いで典型的DM(classic DM)、そしてCADMが最も不良。抗ARS抗体陽性は生命予後の良好因子となる。