脳出血の手術療法
【手術療法が行われる理由】
脳出血は血腫周囲の脳への圧迫により二次的な損傷をきたし、血腫がある程度以上大きい場合には脳ヘルニアをきたし致命的になりうる。
発症後3日から1週間をピークに脳浮腫をきたし、頭蓋内圧亢進症状を伴い意識障害を起こす。
発症24時間以内、特に6時間以内に血腫増大や再出血がみられることも多い(20%)。
【手術方法】
開頭血腫除去術、定位血腫除去術、神経内視鏡手術の3方法がある。
1)開頭血腫除去術
全身麻酔下に開頭を行い、血腫に近い脳に切開を加え、通常は顕微鏡下に操作を行う。
最も一般的に行われる手術法で、全国どこでも施行できる。
血腫は確実に除去可能であり、止血を確実に行うことができる。
脳浮腫が強い場合は減圧開頭術を追加できる。
デメリットは全身麻酔が必要なこと、侵襲が比較的大きいこと、術後の再出血が多いことなど。
2)定位的血腫除去術
一般的にCT定位手術用フレームを用いて行う。
頭部に定位手術用フレームを装着し、CTスキャンで血腫の中心点を計測する。頭蓋骨に穿頭を行い、定位的に外径3mmの金属製吸引管を血腫中心に挿入し、シリンジで吸引する。
同時にカテーテルを血腫に挿入し、ウロキナーゼによる溶解療法を併用することもある。
局所麻酔下での小皮膚切開と穿頭を行う手術であるため、開頭術に比べて低侵襲。
しかし血腫の吸引率は開頭術と比べて低く、吸引術中に血腫腔内からの出血に対する止血処置ができないため、術後の再出血率がやや高い(6〜8%)。
止血が完成されていない発症6時間以内は原則禁忌。
3)神経内視鏡手術
穿頭術を行い、外径8mmの透過性外筒を血腫腔内に挿入し、直径2.7mmの硬性鏡を挿入して吸引管を用いてTVモニターで術野を観察し、内視鏡下に血腫を吸引する。
動脈性出血は、吸引管を経由し電気凝固することで止血を行う。
局所麻酔下での手術が可能で、穿頭術のため侵襲が少なく、ほぼ全量の血腫吸引が可能となる。
また、血腫吸引術中の動脈性の出血を十分にコントロールすることができる。
発症後6時間以内で血腫の増大の可能性が高い超急性期にも比較的安全に手術ができる。
【註記】
【参考】
・西原哲浩「脳出血の手術療法」:日本医師会雑誌 第146巻・特別号(1) 2017
【作成】2017-09-01