胸やけ heartburn
【定義】
心窩部から前胸部胸骨後方にかけて上昇する灼熱感を伴う不快な感覚。
【主な原因疾患】
・逆流性食道炎(GERD)
・機能性ディスペプシア
・胃十二指腸潰瘍
・食道がん、胃がん
・食道運動障害:食道アカラシアなど
・好酸球性食道炎
・狭心症、心筋梗塞
【発生機序】
・LES圧の低下による逆流(free reflex)
・低LES圧+腹圧上昇による逆流(strain reflex)
・嚥下と関係のないLES弛緩(一過性LES弛緩)
*LES:下部食道括約筋
胃酸逆流の大部分は一過性LES弛緩に伴う。
その場合、以下のような特徴が見られる。
① 食後に発生する
一過性LES弛緩は食後に頻回に発生するため
② 過食や早食いでおこる
胃底部の伸展により一過性LES弛緩が誘発されるため
③ 高脂肪食摂取後に起こる
コレシストキニンによる一過性LES弛緩の誘発
④ 前屈姿勢、咳嗽、締め付けた服装時に起こる
低LES圧のため、腹圧上昇に伴い逆流が発生する
⑤ おくびがよく出る
おくびも一過性LES弛緩に伴い発生するため
⑥ 制酸薬、飲水により症状が改善する
一方、器質的疾患を疑うサインには次のものがある
・体重減少
・貧血
・黒色便
・NSAIDs、抗血小板薬の内服歴
・がん、消化性潰瘍の既往
・がんの家族歴
・40歳以上
【治療】
1)生活指導
・暴飲暴食を避け、ゆっくり食べる
・高脂肪食回避
・就寝前3時間は食事を摂らない
・適正体重への減量
・夜間胸やけに対してはベッドの頭側挙上
2)PPIテスト
PPI常用量の1〜2週間内服により症状が改善した場合、胃酸逆流あり。
PPIよりも強力な酸抑制効果を持つカリウムイオン競合型アシッドブロッカー potassium-competitive acid blocker : P-CAB(ボノプラザンフマル酸塩:タケキャブ)が2015年より登場。
【PPI抵抗性GERDの原因】
・PPIを使用しているが、不十分な酸抑制のために起こる酸逆流
・食道粘膜知覚過敏に加え、酸以外(pH4以上)の液体逆流や空気逆流
・食道運動障害
・好酸球性食道炎
・機能性胸やけ(精神的要因)
↓
・食道内圧検査や食道インピーダンスpH検査へ
【参考】
・「胸やけー鑑別すべき疾患と対策」:川見典之、岩切勝彦:日医雑誌 Vol.147 No.10 2019