肺炎球菌感染症
【概念】
肺炎球菌 Streptococcus pneumoniaeはG陽性双球菌で、鼻咽腔に常在する。
小児および高齢者の細菌性肺炎と髄膜炎の主要な起炎菌となる。その他、副鼻腔炎や中耳炎の主な原因にもなる。
肺炎球菌はヒトのみが保菌し、健常者の保菌率は小児で20〜40%、成人で10%程度である。
培養でα溶血性のコロニーを形成し、細胞壁外の莢膜多糖体の抗原性に基づき、92種類以上の血清型に分類される。
わが国では肺炎球菌ワクチンの公費助成が2011年から小児に対し、2014年から65歳以上の高齢者に対して開始されている。
【病態生理】
肺炎球菌を含む飛沫への暴露により、鼻咽腔への定着が起こる。定着持続期間は1週間〜6ヶ月とさまざまで、このうち一部が感染症状を発症する。
菌体の最外層にある莢膜多糖は、肺胞マクロファージや肺胞上皮細胞による菌の貪食作用に対し抵抗性を示す。莢膜型の種類と分離頻度や重症度には相関がある。
増殖した菌は pneumolysin, autolysin, neuraminidaseといった細胞毒素や蛋白分解酵素を産生し、感染巣を拡大する。さらに、菌の細胞壁構成成分であるテイコ酸やリポテイコ酸は強い炎症惹起作用を有し、炎症性サイトカインの誘導や好中球の遊走、補体の活性化、血小板活性化因子の産生などを誘導する。
【臨床症状】
肺炎、慢性気道感染症の急性増悪、副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎、感染性心内膜炎の起炎菌となる。
肺炎では発熱、悪寒戦慄で発症し、咳・膿性痰(ときに鉄さび色)がみられる。
【診断】
・培養同定検査による肺炎球菌の分離
・迅速検査:肺炎球菌尿中抗原検査、肺炎球菌細胞壁抗原検出検査など
【治療】
・髄膜炎と非髄膜炎で抗菌薬の感受性判定基準が異なる。
・非髄膜炎ではほぼすべての株がペニシリン感受性であり、ペニシリン系薬が第一選択となる。
・髄膜炎では薬剤感受性結果が得られるまで、第3世代セフェム系薬とバンコマイシンの併用投与。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-02