糖尿病の診断
【75g経口糖負荷試験OGTTによる判定】
・空腹時血糖126mg/dl以上または75gOGTT2時間値200mg/dl以上のとき糖尿病型と判定する。
・空腹時血糖110mg/dl未満かつ75gOGTT2時間値140mg/dl未満のとき正常型と判定する。
・正常型にも糖尿病型に当てはまらないものを境界型とする。
・随時血糖値≧200mg/dlおよびHbA1c(NGSP)≧6.5%の場合も糖尿病型とみなす。
・正常型であっても、75gOGTT1時間値が180mgdl以上の場合は境界型に準じた取扱が必要となる。
・空腹時血糖値100〜109mg/dlのものは正常高値と呼ぶ。
【糖尿病の診断手順】
<臨床診断>
1)初回検査で
① 空腹時血糖値≧126 mg/dl
② 75 g OGTT2時間値≧200 mg/dl
③ 随時血糖値≧200 mg/dl
④ HbA1c (NGSP)≧6.5%(HbA1c (JDS)≧6.1%)
のうちいずれかを認めた場合は、「糖尿病型」と判定する。
別の日に再検査を行い、再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断する*。
ただし、HbA1cのみの反復検査による診断は不可とする。
また,血糖値とHbA1cが同一採血で糖尿病型を示すこと(①〜③のいずれかと④)が確認されれば、初回検査だけでも糖尿病と診断してよい。
2)血糖値が糖尿病型(①〜③のいずれか)を示し、かつ次のいずれかの条件がみたされた場合は、初回検査だけでも糖尿病と診断できる。
・糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
・確実な糖尿病網膜症の存在
3)過去において、上記1)ないしは2)の条件がみたされていたことが確認できる場合には、現在の検査値が上記の条件に合致しなくても、糖尿病と診断するか、糖尿病の疑いを持って対応する必要がある。
4)上記1)〜3)によっても糖尿病の判定が困難な場合には、糖尿病の疑いをもって患者を追跡し、時期をおいて再検査する。
5)初回検査と再検査における判定方法の選択には以下に留意する。
・初回検査の判定にHbA1cを用いた場合、再検査ではそれ以外の判定方法を含めることが診断に必須である。検査においては、原則として血糖値と HbA1cの双方を測定するものとする。
・初回検査の判定が随時血糖値≧200mg/dlで行われた場合、再検査は他の検査方法によることが望ましい。
・HbA1cと平均的な血糖値とが乖離する可能性のある疾患・状況の場合には、必ず血糖値による診断を行う。
疫学調査:糖尿病の頻度推定を目的とする場合は、1回だけの検査による「糖尿病型」の判定を「糖尿病」と読み替えてもよい。
なるべく HbA1c(NGSP)≧6.5 %(HbA1c(JDS)≧6.1 %)あるいはOGTT2時間値≧200 mg/dlの基準を用いる。
検診:糖尿病およびその高リスク群を見逃すことなく検出することが重要である.スクリーニングには血糖値, HbA1cのみならず、家族歴,肥満などの臨床情報も参考にする。
*ストレスのない状態での高血糖の確認が必要である。
【75g経口糖負荷試験が推奨される場合】
1)強く推奨される場合(現在糖尿病の疑いが否定できないグループ)
・空腹時血糖値が110〜125mg/dlのもの
・随時血糖値が140〜199mg/dlのもの
・HbA1c(NGSP)が6.0〜6.4% (HbA1c(JDS)が5.6〜6.0 %)のもの
(明らかな糖尿病の症状が存在するものを除く)
2)行うことが望ましい場合(糖尿病でなくとも将来糖尿病の発症リスクが高いグループ:高血圧・脂質異常症・肥満など動脈硬化のリスクを持つものは特に施行が望ましい)
・空腹時血糖値が100〜109mg/dl のもの
・HbA1c(NGSP)が5.6〜5.9%(HbA1c(JDS)が5.2〜5.5%)のもの
・上記を満たさなくても,濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が存在するもの
【境界型とIFG、IGT】
・IFG (impaired fasting glucose)
ADA*では空腹時血糖のみを測定し、100以上126mg/dl未満をIFGと呼ぶ。
WHOでは空腹時血糖110以上126mg/dl未満、かつOGTT2時間値140mg/dl未満のものをIFG(狭義)と呼ぶ。
・IGT (impaired glucose tolerance)
ADAもWHOも空腹時血糖値126mg/dl未満かつOGTT2時間値が140以上200mg/dl未満のものをIGTと呼ぶ。
・一般に境界型は糖尿病特有の合併症(最小血管症)をきたすことはほとんどないが、糖尿病発症のリスクが高く、動脈硬化症のリスクも高い。
*ADA:American Diabetes Association
【註記】
【参考】
・糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版):糖尿病 55巻7号 2012
【作成】2017-01-03