機能性ディスペプシア functional dyspepsia

機能性ディスペプシア
functional dyspepsia : FD


【概念】
 機能性消化管疾患のうち、異十二指腸障害の症状が主となるもの。上腹部の痛みや不快感、膨満感などが慢性的にみられるが、明らかな器質的疾患は認められない。
 罹患率は約15%。

【診断基準】
 上部内視鏡検査を含めた各種検査において症状の原因となる器質的疾患を認めないにもかかわらず、
① つらいと感じる食後のもたれ感
② つらいと感じる早期飽満感
③ つらいと感じる心窩部痛
④ つらいと感じる心窩部灼熱感
のうちの1つ以上の症状があり、これらが6ヶ月以上前に初発し、3ヶ月以上持続しているもの。
(RomeⅣ基準 2016)

・食後愁訴症候群 postprandial distress syndrome : PDS
 ①または②を週に3回以上認めるもの。
 早期飽満感とは、「食事開始後早期に胃が充満した感じとなり、食事を最後まで摂取できない状態」と定義される。

・心窩部痛症候群 epigastric pain syndrome : EPS
 ③または④を週に1回以上認めるもの。
 痛みには空腹時に出現するもの、食事によって改善するもの、食後に出現するもののいずれも含まれる。

【病態生理】
 食物を摂取したときに胃が拡張する適応性弛緩がうまくいかない状態である胃適応性弛緩不全が早期飽満感の病態生理と考えられる。
 消化された食物が胃前庭部の収縮により十二指腸へと送られる胃排泄がうまくいかないことが食後の胃もたれの原因と考えられるが、症状との関連の有無に関してははっきりしない。

 ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)陽性でディスペプシア症状を有する患者に、除菌治療が有効な場合がある(全体の1割程度)。
 ピロリ菌陽性の場合、まず除菌治療を行い、除菌治療後6〜12ヶ月以上経過して症状が消失・改善するものは「H. pylori関連ディスペプシア」としてFDと別扱いになる(RomeⅣ)。

 腸脳相関 brain-gut interactionに関しては「機能性消化管疾患」を参照。

【治療】
・保険適用はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤のアコチアミド(アコファイド)のみ。
・一般に慢性胃炎に保険適用となる薬剤はFDにも使用可能。
・特にPDSには消化管運動機能改善薬や六君子湯などの漢方薬が使用可能。
・GERDとの鑑別が困難な例にはPPI投与も行われる。
・それでも症状の改善が見られない場合は抗うつ剤や抗不安剤投与も考慮される。


【参考】
・機能性ディスペプシア:正岡健洋、山本悠太、金井隆典:日医雑誌 Vol. 147 No. 10 2019